狩猟の〝恵み〟生かし交流 移住女性ハンターが「食の交差点」開催 住田で(別写真あり)

▲ シカ肉をさばく実演などが行われた「食の交差点」

 住田町に移住し、昨年、狩猟免許を取得した20代の女性3人で構成する「チームいただきます」の主催イベント「1日限りの食の交差点 いただきます広場」は24日、世田米のまち家世田米駅で開かれた。町内で捕獲されたシカの肉をさばく実演を通じて、「命をいただく」尊さや狩猟が身近にある生活などを発信。気仙や三陸沿岸の食材を提供する出店もあり、活気を呼び込んだ。

 

「命をいただく」多彩に発信

 

 「チームいただきます」は、まち家世田米駅の指定管理者となっている一般社団法人SUMICAの菅原優衣さん(26)と町教育コーディネーターの小宅優美さん(27)、林野庁から町林政課に派遣されている横江美幸さん(28)の3人で組織。昨年度、狩猟免許の取得に成功し、本年度は実際にシカ猟の経験を積んでいる。
 主催イベントの開催は、今年2月以来。世田米はかつて内陸と沿岸の物資の交換所として栄えた歴史にちなみ、食分野で活躍する生産者らを町内外から招き、出店などを通じて内陸と沿岸部の食文化の交流を楽しんでもらおうと企画した。
 会場には、1週間前にわな猟で捕獲したシカの後ろ足部分を用意。施設の軒先につり下げ、ベテランハンターである上有住の橋本勝美さん(72)らの補助を受けながら、横江さんが皮をはぎ、精肉までの工程を実演した。
 近くで見守った小宅さんらは「こうした作業が大変なんだということを、身に染みて感じた」「筋肉の位置などが分かっていないと、なかなか切り落とすことができない」などと解説。幅広い世代の来場者が見守り、「命をいただく」過程を目に焼き付けた。
 会場では、橋本さんらが味付けしたシカの肉を炭火焼きで提供。橋本さんによると「ジビエ(野生鳥獣の肉)は、最初に食べた時の印象が大事で、うまく処理されたものに出合うかどうか。さっぱりとした脂が特徴」といい、秘伝のみそ味で仕上げたくさみのない柔らかさが好評を博した。
 「内陸と沿岸の食文化が交わる空間」を目指し、大槌産の養殖カキ、陸前高田産のリンゴ、ショウガを販売する店も並び、にぎわいを呼んだ。
 住田高校生有志による「チャレンジショップ」では、陸前高田産のリンゴなどを生かしたフレンチトーストなどを販売。調理や接客の忙しさに追われながらも、充実した表情を見せていた。
 参加した2年生の瀬戸藍里さん(17)は「お客さんに『ありがとう』と言ってもらえるのが一番の喜び。楽しかった」と語り、笑顔を見せていた。
 このほか、狩猟者や農水産事業者によるトークセッションも。あいにくの雨となったが、町内外から多くの来訪があり、活気に包まれた。
 菅原さんは「住田への移住が2年目となり、これまで得たつながりを生かして何かできないか考えていた。動物が食べ物になるまでの過程を見てもらう機会になったと思う。これからも、狩猟に関する発信をしていきたい」と話していた。