〝移転停滞〟の現状指摘 陸前高田再生支援研究P 9年目の仮設住宅団地調査

▲ 最終集約地とされる竹駒町の滝の里仮設団地などでの調査内容を報告

 法政、明治、工学院などの大学教員と学生らによる陸前高田地域再生支援研究プロジェクトは、同市と住田町の仮設住宅団地で8月に行った調査内容を報告した。学生らは入居から9年目を迎えた中での生活環境などについて、関係者にインタビュー調査を実施。仮設住宅入居は約100戸あり、住宅再建などによる減少数が緩やかになる中、空き室の有効活用や周辺の雑草対策など、引き続き細やかな支援の重要性などを浮き彫りにしている。

 同プロジェクトは、平成23年5月から被災者が進める地域再生や住宅再建の課題を出し合い、主体的な取り組みにつながるよう支援を展開。さらに、市内外の仮設住宅団地をたずね、自治会長らに居住者の暮らしを聞く活動を重ねてきた。
 本年度は、学生ら延べ16人が参加し、市内14カ所と住田町内2カ所の仮設住宅団地を訪問。入居者減少に伴い、多くの自治会が解散している中、元自治会長や区長らにインタビューを行った。
 各団地では▽1年間の転出・転入の状況▽仮設住宅の撤去・集約化▽住環境や周辺環境上の問題と対応▽自治会活動の状況▽外部支援団体の状況▽住宅再建・復興――に関する状況を尋ねた。 
 報告書によると、今調査時の居住戸数は106戸で、昨年調査時よりも87戸減少。ただし、一昨年からの1年間では313戸減少していたことから「仮設住宅からの移転がかなり停滞している状況を示している」と指摘している。
 最終集約団地とされる滝の里(竹駒町)で24戸の居住利用があり、市内では最も多かった。多くは宅地整備や住宅建設を待ち続けているが、建設費用の高騰を受けて再検討したり、まだ再建策を決めかねている世帯もあるという。
 さらに、入居者の多くが被災前に暮らしていた気仙町今泉地区では、当初予定から2年以上も土地の引き渡しが遅れており、入居者からは「これほど長くかかると分かっていれば、他の場所で再建するなど選択肢を広げて検討した」と不満の声も寄せられた。
 また、小中高生の家族を抱える世帯も一定数あり、今回の調査でも「年ごろの子どもを長期間にわたって育てる環境ではない」といった切実な声も。空き室の有効活用など、被災者や団地の実情に見合った柔軟な対応の必要性にも言及している。
 全団地に共通する課題として、昨年に続き「雑草の刈り取り負担」を指摘。住民や有志による草刈りや、外部支援団体に依頼している団体がある半面、小規模団地では空き室や周辺の雑草を放置状態にせざるを得ない現状という。
 プロジェクトの研究代表を務める法政大学現代福祉学部の宮城孝教授は「仮設住宅の移転は停滞しており、計画通り進んでいない状況。大規模な自然災害においては、このような事態が生じて仮設住宅における暮らしが長期化せざるを得ないことに配慮する必要がある」と語る。
 さらに、今後の活動においては「仮設住宅への移転・居住初期、中期、後期、終了期の各時期に、陸前高田市内の仮設住宅で被災者の暮らしはどのような状況だったか、どのような困難を抱えていたかを明らかにしていきたい。災害史上でもまれに見る、約10年にわたり仮設住宅居住を強いられた原因も検証できれば」としている。
 調査報告は、科学研究費基盤「被災者の主体性と専門家の関与に着目した東日本大震災の復興事業のプロセスの検証」(山本俊哉研究代表)による研究助成で刊行。A4版23㌻にまとめ、各団地や行政機関などに配布した。