「つながりある学び」発信 住田町内小中高各校で地域創造学の授業公開(別写真あり)

▲ 有住中で行われた公開授業

 住田町教育委員会による「文部科学省研究開発学校指定第3年次学校公開研究会」は29日、町内各地で行われた。世田米小、有住小、世田米中、有住中、住田高校では、平成29年度から小中高校のつながりを生かした独自の新設教科「地域創造学」による社会的実践力の養成や教育課程を研究しており、同日は授業の様子を町内外の教育関係者らに公開。地域資源を〝教材〟とし、年代や学校間のつながりを意識した学習成果の共有を図った。

 

社会的実践力育成へ

 

 少子高齢化の進行や、産業分野の担い手不足などの地域課題を抱える住田町。一方で、それらは中山間地共通の悩みでもある。町教委では、研究開発学校指定を受けて新設教科「地域創造学」を展開することで、地域全体の活性化にもつながる社会的実践力の成長を目指し、全国でも生かされるモデル確立を見据えている。
 公開研究会は、指定から2年半を過ぎた取り組みに対して指導や助言を受け、今後の研究実践につなげようと開催。町内外の教育関係者ら約130人が参加した。
 午前中は、学校ごとに公開授業を実施。このうち、有住中1年生の授業では、地元の資源や地域課題について研究した内容を3学期に有住小6年生に対して説明するために、先輩である2年生に発表予定の内容を聞いてもらい、助言を受けながら改善を図った。
 1年生4人はそれぞれ、有害植物、鳥獣被害、宮沢賢治と種山ケ原、種山と有住の山々について調査。説明を聞いた2年生18人からのアドバイスをもとに、「町内で実際に起こっている鳥獣被害の例」「これからの研究でもっと追求したいこと」などを追加して練り直し、もう一度発表を行った。
 訪れた教育関係者は、学年の枠を超えて生徒たちが主体的に相互理解を深め、向上を図る姿を視察。五葉地区公民館の藤井洋治館長(70)は「短時間で効率的な授業をするための工夫が凝らされている。若者の感性を生かし、これからのまちのあり方を取り上げている研究が多く、光るものがあった」と話していた。
 学校ごとの授業研究会をはさみ、午後は町農林会館で全体会を開催。冒頭、菊池宏教育長は「新たな時代に向け、中山間地の地域を支える人材をつくる意図的な学習が必要なのではないか」との視点を紹介したうえで、「私たちの研究は緒についたばかりで、生みの苦しみを味わっている。きたんのない意見をうかがいたい」と述べた。
 引き続き、町教育委員会の千葉邦彦指導主事は、町内の人口減少の推移に加え、地域創造学が目指す方向性や小学校から高校までの12年間の中で描く目標像などを示しながら、本年度までの成果を総括。小中高生のどの年代からも「もっと地域のことを調べたい」「課題を解決するためにこんな資料がほしい」といった声が出ている動きに触れ、地域を題材とした探求意欲の高まりを挙げた。
 出席者からは、地域人材のさらなる活用や、学校間連携の充実に期待する声が寄せられた。後半は、町内での指導会議にも参画する岩手大学教育学部の田代高章教授が「教育課程改革における地域創造学の意義と課題」と題して講演を行った。