(仮)復興交流推進セを整備 旧甫嶺小を改修 住民活動や体験提供の場に 大船渡

▲ (仮称)甫嶺復興交流推進センターの1階平面図

2階平面図

 大船渡市は29日の市議会全員協議会で、三陸町越喜来の旧甫嶺小学校を改修し、「(仮称)甫嶺復興交流推進センター」を整備することを明らかにした。東日本大震災で被災した地域住民らの交流となりわいの場、自転車BMXやスキューバダイビングといった地元体験プログラム提供の場などとして活用する施設で、市内における廃校利用は今回が初めて。完成は来年9月の予定で、運営は今後設立する地域会社が行政や民間と連携を図りながら担う。

 

来年9月完成目指す


 旧甫嶺小は、鉄筋コンクリート一部鉄骨造2階建てで、延床面積は2327平方㍍。震災後、津波で被災した越喜来、地震被害を受けた崎浜の各小学校が間借りし、3校統合後は越喜来小として利用。同校が新校舎に移転後は、空き校舎となっている。
 地元の甫嶺、上甫嶺両自治会と、越喜来地区震災復興委員会は、以前から旧甫嶺小校舎、校庭の利活用策を検討。29年2月には市に対し、構想案とともに有効な利用を求めていた。
 市は30年度に策定した「(仮称)甫嶺小学校改修・利活用基本計画」の調査事業に基づき、(仮称)甫嶺復興交流推進センター整備工事にかかる設計業務を実施。地元自治会や同委員会などからなる甫嶺地区復興交流推進官民会議などとの検討、協議を進め、施設の具体的な用途(内容)を固めた。
 同センターは、被災者や地区住民らの趣味、創作等の生きがいにつながる各種サークル活動、なりわいの場を創出するとともに、これらの活動を体験プログラム化し、民間が提供するアクティビティや既存の観光資源等と有機的に結びつけて観光活性化、交流人口拡大を図ろうと整備する。
 1階部分は、地区住民を中心とした活動や交流、地区内外の交流拠点として、交流・関係人口の増加を図り、新たな活力の創出を目指す「地区活動・交流ゾーン」。多目的利用スペース(洋室、和室)やオープンキッチン、シャワー室などを配し、体育館は多目的利用が可能な室内パークとする。
 2階部分は、三陸の自然を生かした体験プログラムによる観光誘客と地域交流によって来訪者・滞在者を増やし、域内周遊させることで滞在型観光産業の振興を目指す「宿泊・交流ゾーン」。72床のドミトリーを中心に、工作室・ワークショップ室、コミュニティルームなどを設ける。
 整備には、1階に復興交付金、2階は地方創生推進交付金を活用。設計費を除く事業費は1億7266万円で、このうち一般財源からは610万円を充てる。
 校庭は、市内のBMX事業者が敷地の一部を借り受け、BMXスタジアムを整備。北海道・東北地区初の全日本BMX連盟公認コースとなる。
 施設運営は、今後設置される新たな地域会社(地区住民らによる株式会社を想定)が、市から指定管理を受けて取り組むことを基本とする。地域会社はBMX事業者と地元のダイビング事業会社と業務連携し、施設や体験プログラム利用者の拡大を図る。
 また、センター整備と並行し、地方創生推進交付金のソフト事業「スポーツ・アクティビティを中核とした体験型交流創出・展開プロジェクト」も展開。体験プログラム提供事業者や観光関連事業者らと連携し、観光関係者によるプラットフォームの組成、体験プログラムの情報発信、ツアー造成などを進めていく。
 議員らは事業への期待を示しながら、「民間事業者も主体的に参画してほしい」「事業をやる以上は見通しを確かなものにしてもらいたい」などの意見を寄せた。
 センター整備は今後、来年9月の完成を目指し、年度内をめどに工事にかかる事務を進めていく。
 新沼徹企画政策部長は「市内の廃校や被災跡地利用にとどまらず、地方創生、住民協働、行政と民間による持続可能なまちづくりの取り組みとしても先駆的な事業になる」と話している。