発酵の可能性を発信 〝醸〟がつくるまちづくり 陸前高田でフォーラム

▲ 醸造や発酵学を専門とする小泉さん㊨が講演

 陸前高田市気仙町の今泉地区に来秋、発酵食品・飲料・エネルギーの里として「発酵パーク・CAMOSY(カモシー)」が整備されるのに向けて11月30日、高田町の市コミュニティホールでまちづくりフォーラムが開かれた。なぜ陸前高田で発酵なのか、みそや酒など「醸す」ことによって生まれる仕事を通じ、どのようにまちを活性化していくのかといった構想について市民らに発信した。


今泉地区への施設整備に向け

 

 同市の被災事業者や起業者らは今年6月、今泉地区の復興に向けてまちづくり㈱醸(カモシー、田村滿社長)を設立。古くから発酵食品に携わる事業所が軒を連ねていた今泉の伝統・文化を礎とした新しい地域づくりを進めるにあたり、パンや地ビール、チョコレートなど、発酵なしでは作れない食品について広く提案していく複合施設を土地区画整理事業区域内に整備することとしている。
 来年11月を予定する施設のオープンまで約1年と迫ったことを受け、同社と(一社)ソーシャルビジネス・ネットワークは、広く市民らに発酵についての理解を深めてもらおうと同フォーラムを企画。(一社)陸前高田・今泉地区明日へのまちづくり協議会、㈱コミュニティデザイン、㈱アンドレシピが共催し、およそ100人が参加した。
 フォーラムでは、東京農業大学名誉教授の小泉武夫さんが「発酵とまちづくり」として講演。小泉さんは醸造学・発酵学・食文化論が専門で、国や自治体などにおいて食に関するアドバイザーを多数兼任している。
 小泉さんはこの日、「発酵は食品だけでなく、薬や洗剤、ごみの分解など、生活のさまざまな場面で活用されている」と説明。「川の汚染も発酵微生物できれいにしているし、メタン発酵によるエネルギーづくりにも使われるなど、実に多くの可能性を秘めている」と強調した。
 そのうえで、「発酵」によるまちづくりが全国数十カ所で行われ、ネットワークが構築されていることも紹介。秋田県横手市には市立の研究所があることや、滋賀県高島市では、発酵にまつわる店の紹介マップができるほど地域に根差した産業になっているといい、陸前高田市でもさまざまな展開が期待できるとした。
 また、小泉さんと、みそ・しょうゆなどを製造販売する同市の八木澤商店の河野通洋社長が対談。発酵が持つ可能性について語ったほか、参加者が発酵食を楽しむ時間も設けられた。
 発酵パーク・カモシーはチョコレート工房や地元産の新鮮な素材と発酵食材を生かし、ジャンルにとらわれない料理を提供する「発酵キッチン」、世界中の発酵調味料や発酵食品を集めたセレクトショップ、パン工房、陸前高田産クラフトビール醸造所、再生可能エネルギーの営業所──など、7事業者がテナントとして入るほか、期間限定レストランやワークショップなどが開けるイベントスペースが整備される見通しとなっている。
 建築面積はおよそ189坪。事業費は約1億4000万円で、津波・原子力災害被災地域雇用創出企業立地補助金を活用し、整備される計画。
 カモシープロジェクトについては同ホームページ(https://camocy.jp/)でも公開されている。