不漁の打開策となるか マイワシの特別採捕 県知事が許可 県内

▲ サンマ船で漁獲されたマイワシが大船渡に初水揚げされた(11月30日)

 本県沖合で、5㌧以上20㌧未満の漁船によるマイワシの特別採捕が行われている。近年、サンマやスルメイカなど漁船漁業の主力となる魚種の不漁が続いていることを受けてのもので、本州では初の試み。サンマ船やイカ釣り船などで特定漁法による漁獲が県知事から許可されており、11月30日には大船渡市魚市場にサンマ船が漁獲したマイワシ50㌧が初めて水揚げされた。現在は試験段階だが、県や県沿岸漁船漁業組合(本部・盛岡市、志田惠洋組合長理事)などは今後、この漁業の採算性などを見極めながら、将来的には知事許可漁業として〝新たな漁業〟定着を目指す。不漁が続く沿岸漁船漁業の打開策となるか注目される。

 

大船渡でサンマ船が水揚げ

本州で初の試み

 

 特別採捕は、試験・研究を目的とする場合に特別に県知事が許可するもの。これまで、本県ではアワビの資源状況調査などで許可された例があるが、マイワシを主対象として特別採捕許可が出たのは初めて。北海道ではすでに実施されており、本州では岩手県が初となる。
 今年3月、気仙地区の漁船漁業者有志から県沿岸漁船漁業組合に対してマイワシ漁獲に対する請願書が提出され、組合がこれを受けて県や県漁連に働きかけた結果、特別採捕許可実現に至った。
 本県で水揚げされているマイワシは、主に定置網や巻き網船で漁獲されたもの。特別採捕許可の対象となっているのは、魚の群れの下に網を設置して漁獲する敷き網漁、同じく群れの下にタモを設置して魚をすくうタモ網漁の2種類。
 期間は、敷き網が今年10月〜来年2月末、タモ網が今年10月〜来年6月末で、本県沖に限って操業が可能となっている。
 特別採捕許可にあたっては、県が定める「定置網漁場から1海里以上離れる」という規則のほか、組合が独自に「他魚種は捕獲してはいけない」「巻き網船操業時は、1マイル以上離れる」など、他漁業の操業を妨げないようルールを設定している。
 マイワシは国が定めるTAC(漁獲可能量)管理の対象だが、すでに特別採捕による枠が設けられている。今年12月までの岩手県管理枠は2万3000㌧。このうち、定置網が2万㌧で、沿岸漁船漁業による枠は「若干量」と定められた。
 特別採捕によるマイワシ漁獲は10月1日付で許可されていたが、本県沖に漁場が形成されていなかったために、11月末の初水揚げとなり、今月2日にも約110㌧が水揚げされた。入札の結果、初水揚げのマイワシには1㌔当たり55〜35円の値が付いた。
 同組合の志田組合長理事は「やっと魚が来てくれた。新しい漁業として、うまく活性化を図っていきたい」と定着を願う。
 マイワシは近年、全国的に水揚げ量が上向き傾向にある。大船渡市魚市場への今年4〜11月末の累計水揚げ数量は3812㌧で、前年同期を20・1%上回っている。
 一方で、同魚市場の主力魚種である秋サケやサンマなどは、極端な不漁に見舞われている。三陸沿岸でのサンマ漁は12月、スルメイカ漁は1月には終漁するため、イサダ漁が解禁される3月ごろまでのおよそ2カ月間、魚市場への水揚げ数は少なくなるが、今回の特別採捕許可により、その期間にもまとまった数量のマイワシが水揚げされる可能性もある。
 市魚市場を運営する大船渡魚市場㈱の佐藤光男専務は「イサダが始まるまでの漁業としての地位を確立してほしい。買い受け人の選択肢も広がると思う」と話している。