防災学習への関わり方学ぶ インドネシアの博物館関係者が津波伝承館を視察  陸前高田

▲ 館内を見学するアチェ津波博物館の関係者ら

 インドネシアのバンダ・アチェ市にあるアチェ津波博物館の関係者らが7日、陸前高田市の東日本大震災津波伝承館を視察した。バンダ・アチェ市では来年度から、学校、地域住民が防災教育について学ぶプロジェクトが始まることから、防災教育施設の役割も果たしている同館を訪れたもの。同博物館関係者らは伝承館関係者から防災学習への関わり方を学ぶとともに、互いの施設の情報を共有しながら連携して震災の教訓・記憶を継承していくことも確認した。

 

教訓伝承への連携も確認

 

 平成16年に発生したスマトラ沖大地震インド洋大津波によって、インドネシアをはじめとするインド洋沿岸諸国は甚大な被害を受けた。中でも、スマトラ島北部にあるバンダ・アチェ市では地震と津波によって登録人口26万人のうち6万人以上が犠牲となり、2万戸近い家屋が全半壊した。
 アチェ津波博物館は、この災害と教訓を正しく伝え、再び津波に見舞われた際に被害を軽減することを目指して2009年に開館。避難用の高台に建てられた施設は4階建てで、館内の回廊を回りながら津波の襲来を追体験できる造りとなっているほか、津波にのみ込まれるまちのジオラマや被災から復興までの状況を示す資料が多数展示されている。同市の観光の目玉ともなっており、1日平均約2000人が訪れているという。
 一方、東日本大震災津波伝承館は、震災の教訓継承、発災から復興までの状況と支援への感謝発信を目的として高田松原津波復興祈念公園内に県が整備したもので、今年9月に開館。11月末までの来館者は8万人余り。市内外の小中学生らも訪れ、震災について学んでいる。
 今回の視察は、JICA(日本国際協力機構)の草の根技術協力事業(地域活性化特別枠)において「バンダ・アチェ市における地域住民参加型津波防災活動の導入プロジェクト」が採択されたことを受けてのもので、釜石市など被災地での研修も計画されている。
 この日はアチェ津波博物館のハフニダール館長(43)と、同館を運営するアチェ州の観光文化局職員合わせて6人が来県。釜石市の釜石祈りのパーク、いのちをつなぐ未来館を視察後、陸前高田市に足を運んだ。
 東日本大震災津波伝承館の熊谷正則副館長が案内役を務め、東日本大震災の概要について説明。震災当日の映像や被災した気仙大橋の一部、田野畑村の消防団車両といった展示物を紹介しながら、津波の恐ろしさを訴えた。
 アチェ津波博物館は開館から10年が経過したが、住民への伝承や資料のデジタル化などといった課題を抱えているという。ハフニダール館長は「(東日本大震災津波伝承館は)震災後の動きが紹介されているので分かりやすく、学び合いの場にもなっていて素晴らしい施設。この視察の経験を、われわれの事業にも生かしたい。伝承館とアチェの博物館を末永くつないでいければ」と話していた。
 視察後、両館関係者による意見交換の場も設けられ、「お互いの国の震災のことを展示するコーナーがあってもいいのでは」「これを機に、さらに交流を深めていければ」といった声が双方から上がっていた。
 熊谷副館長は「災害への備えの共有や学術的交流など、海外の津波のミュージアムと連携していくきっかけになれば」と話していた。