市に建設反対の署名を提出 吉浜の住民有志が民間の太陽光発電所計画巡り 大船渡

▲ 荒金山と大窪山への太陽光発電所建設計画に反対する地域住民が署名を提出

 大船渡市三陸町吉浜の荒金山と大窪山に民間事業所が太陽光発電所を建設する計画に対し、地元・吉浜の住民有志からなる「荒金山・大窪山太陽光発電所建設に反対する会」(小松錦司代表、21人)が市民らから計画に反対する署名1372人分を集め、10日に同市へ提出した。同会は地域住民の安全な暮らしや自然環境保護などを理由に中止を訴え、土地の所有者である市は、住民合意の観点から事業所側との賃貸契約に慎重な姿勢を示した。

 

 太陽光発電所の建設は、自然電力㈱(代表取締役・磯野謙、川戸健司、長谷川雅也、本社・福岡県福岡市)が計画。
 事業計画場所は、同町吉浜の上野、大野地内の市有地と、釜石市唐丹町字上荒川の民地・自社所有地で、面積は計約80㌶。荒金山と大窪山にそれぞれ太陽光発電所(出力14・7メガワット)を建設し、2カ所で約4万メガワットアワー(一般家庭約1万3000世帯の年間使用電力に相当)を発電する見通し。
 事業者は、同社と東京ガス㈱が資本業務提携契約を締結して設立した会社・プロミネットパワー㈱を業務執行者とする岩手三陸太陽光発電合同会社。運営者は自然電力で、同社グループが用地確保から事業開発、建設、保守・維持管理まで一貫して担うとしている。
 計画については、これまで同社が吉浜地区を中心に住民説明会や座談会を開催。住民らに概要を示し、協議を行ってきたが、住民側からは自然環境や水源への影響などを憂慮し、反対する声が上がっていた。
 こうした中、吉浜の住民有志らが「反対する会」を立ち上げ、座談会終了後の先月中旬から同30日まで署名活動を展開。吉浜地区は協力を呼びかけた395世帯のうち288世帯が署名し、地区外も合わせて1372人分が集まった。
 署名提出は市役所で行われ、小松代表(78)ら同会メンバー9人と、地元の田中英二市議が訪問。市側は戸田公明市長、髙泰久副市長、志田努統括監らが対応した。
 小松代表は「吉浜住民の健康で安心、安全な生活、環境の保全、子や孫の未来のために、市は自然豊かな荒金山、大窪山に太陽光発電所の建設計画を中止することを強く要請する」と述べ、署名簿と集計表を戸田市長に手渡し、集計結果を説明した。
 戸田市長は、「貴重な活動成果を届けていただき、感謝している。心より敬意を表したい」と述べ、市が同社に発行した賃貸証明書の内容を読み上げ、貸付決定の前提となる住民合意や漁業者の理解、環境に配慮した整備手法などが満たされなければ、土地の賃貸ができないことなどを説明。「行政の立場がこれに凝縮されている」とし、現状での賃貸契約締結には慎重な姿勢を示した。
 提出を終え、小松代表は「豊かな環境である吉浜の自然を壊してまで、工作物をつくってはならない。非常に自然豊かな場所に10万枚の太陽光パネルを掲げるのは環境破壊になる。自然に手を付けてはならない」と語った。
 戸田市長は報道陣の取材に対し、「大多数の世帯が反対していることが分かった。いまの状況を見る限りでは、業者との(土地の賃貸)契約はできないと思う」と述べた。
 自然電力側は東海新報社の取材に対し、「計画に反対する方が相当数いらっしゃることは重く受け止めている。その状況で事業を勝手に進めるつもりはない」とコメント。
 一方で、署名用紙に記載された「大船渡市が自然電力に出した山林の賃貸証明書には、『第三者に損害を与えた場合の補償は自然電力において行い、当市は一切の責任を負わない』となっています」との一文に対し、「賃貸証明書に関し、事業者や第三者に損害が出た場合に市は責任を持たないということであり、土地所有者として法的な責任は負う。その意味が正しく伝わっていない」と指摘。
 併せて、参考として遠野市小友町の太陽光発電所建設現場で防災対策が十分に取られず、大雨による土砂が流出した事例が掲載されたとして、「遠野の発電所とは違い、こちらは県の林地開発許可が必要。防災対策が必須であり、防災施設ができてからでなければ施工できない。遠野のような事態は起こりえないと、説明会でも明確に示している」と理解を求めている。