「要サポート」の割合高く 心身の「健康観察」調査結果 沿岸部の児童生徒
令和元年12月11日付 1面
東日本大震災は11日、発生から8年9カ月を迎えた。小学校低学年の子どもたちはすでに震災後に生まれた世代となり、今後は「教訓の継承」などが課題とされる。一方、発災直後から現在に至るまで、沿岸部では心のケアを必要とする「要サポート」の児童・生徒が内陸部と比べて多く、震災後に生まれた小学校低学年の間でも高い割合を示している。陸前高田市では国の支援を受け、小中学校にスクールカウンセラーを配置。国に対し、復興・創生期間終了後も支援の継続を求めている。併せて、子どもたちの心の回復力を高めるためには、楽しく学校生活を送ることが何よりも重要とされ、学校現場でも児童・生徒に「セルフケア」の方法を伝えるなどしている。
震災8年9カ月
心のケアの必要性は今も
県は震災後の平成23年度から「いわて子どものこころサポート事業」として、さまざまな取り組みを展開。毎年同時期に、公立の小中学校と高校合わせて約560校で、「心とからだの健康観察」としてアンケート調査などを行っている。
この健康観察は、児童・生徒が抱える心の負荷の状況を把握するもの。ストレスによって引き起こされる生徒指導上の問題、学校不適応、学業上の問題等を未然に防止し、心身の健やかな成長を図るとともに、中長期にわたる児童生徒の心のサポートに資する参考資料としている。
昨年度の集計結果を見ると、「要サポート」とされる児童・生徒の割合は、調査開始時から「沿岸部のほうが内陸部より高い」という結果が出ている。さらに、震災後に生まれた小学1、2年生だけをみても、沿岸部の低学年児童における「要サポート」の割合は、内陸部よりも高いことが分かる。
沿岸部の「要サポート」児童・生徒の割合は、発災後の23年度が15・8%。24、25年度は13・6%と下降傾向にはあるものの、年度によってまた上昇するなど「一進一退」の状況が続く。
また、30年度は12・3%と、7年が経過しても大幅な減少には至っておらず、子どもたちの心が安定するのには、まだ長い時間を要することがうかがえる。
こうした背景もあり、県内最大の被害を受けた陸前高田市では、震災後から「緊急スクールカウンセラー等活用事業交付金」を活用。本年度も引き続き市内にスクールカウンセラーを配置し、子どもたちの心のケアにあたっている。
同市では、特定の学校に勤務する「配置型」と、市内小中学校10校を定期的に回る「巡回型」のカウンセラーがおり、現在は「配置型」が高田第一中と広田小に1人ずつ、巡回型が1人いる。
また、国の補助を受けて市が独自に雇用したカウンセラーが、陸前高田グローバルキャンパス内の適応支援教室(ジャンプスクール)に1人在籍しており、同市には計4人のスクールカウンセラーがいる。
しかし、どの学校からも相談需要が高く、配置型と巡回型だけでは十分に対応できない状態。適応支援教室のカウンセラーも必要に応じ、ほかの小中学校の巡回をサポートしているという。
震災後に生まれた子どもを含め、今も「要サポート」の児童が多いことについて同市教育委員会は、「さまざまな要因があり、一概にいえるものではないが、震災によって環境が悪化し、保護者も不安定な状況で育児をしなければならなかったことが、子どもの心身にも影響しているのではないか」とみる。
市教委は、仮設住宅から新住居への移転といった「環境の変化」そのものや、再建できずにいる家庭で〝取り残された〟気持ちになるといったこともストレスの一因ではないかと分析。さらに、トラウマを持つ人と接することで受ける「二次的外傷性ストレス」も要因の一つに指摘されており、「周囲から何度も津波の経験を聞くことなどにより、子ども自身もそれを経験したようなトラウマを抱えてしまうことがある」という。
市学校教育課の千葉賢一課長は、「今は中学生になった生徒たちも、ひょっとすると小さいころに『悲しい』と言えないまま大きくなっていたり、ふと当時のことを思い出してしまったりと、表面には見えないが、傷が残ったままでいる場合が多いのではないか」と推察する。
県の「子どものこころサポート事業」においては、調査だけにとどまらず、「こころの授業」として、子どもたちにセルフケアについて伝えるカリキュラムも行われている。無意識のうちにストレスを抱えこんでしまっている子どもが、自分で自分の「心の状態」に気づくための知識を教えるものだ。
授業では、大変なことがあると人の心と体には「なかなか眠れない」「ちょっとしたことでどきっとする」といった変化が起きることや、その変化を感じた場合にリフレッシュするための行動(セルフケア)、「つらいときにマイナスの考えが浮かんでくるのは自然なこと」として、自分を責める必要はないことなどを伝える。
市は復興・創生期間終了後の令和3年度以降も、「緊急スクールカウンセラー等活用事業交付金」といった措置を継続してほしいと要望している。
一方、同課では「学校で楽しく生活し、さまざまなことを身につける中で、『要サポート』の割合は低くなっていくもの。友達や先生、信頼できる人に話を聞いてもらうだけでも、違う」とし、「必要以上に過保護になってしまうのではなく、子どもたちの生きる力を育む教育を行っていきたい」と話している。





