長年の研究・発信に光 山浦さんに文化庁長官表彰 大船渡(別写真あり)

▲ 山浦さんが文化庁長官表彰を戸田市長に報告

 文化活動に優れた功績があった人々に贈られる令和元年度の文化庁長官表彰に、大船渡市盛町の医師で、長年にわたり「ケセン語」の研究と発信に取り組む山浦玄嗣(はるつぐ)さん(79)が選ばれた。東京都千代田区の文部科学省でこのほど行われた表彰式に臨んだ山浦さん。13日には市役所を訪ね、戸田公明市長に受賞を報告。「ケセン語が国に認められたのは本当にうれしい」と喜びを語り、後世へ長く受け継がれることに期待を込めた。

 

「ケセン語」の取り組みたたえ

 

 文化庁長官表彰は、文化活動に優れた成果を示し、わが国の文化の振興に貢献した人々や、日本文化の海外発信、国際文化交流に貢献した人々の功績をたたえるもの。有識者の選考会議で候補者を選んだうえで、文化庁長官が決定する。
 元号が令和に変わって初の表彰となる本年度は、74個人が受賞。本県では山浦さんただ一人が選ばれ、このほかは俳優の竹下景子さん、「うる星やつら」などの作品で知られる漫画家の高橋留美子さん、「ガンダム」シリーズ生みの親のアニメーション監督・富野由悠季(よしゆき)さんらが表彰を受けた。
 山浦さんは東京で生まれ、間もなく母方の故郷の釜石に移住。戦禍の中で越喜来に疎開して気仙に定住した。
 東北大放射線医学部門助教授などを経て、昭和61年4月、盛町に山浦医院を開設。気仙医師会の大船渡医師団長や会長、市学校保健会長など要職も歴任。東日本大震災では医院が津波被害を受けるも応急的診療にあたり、地域住民を献身的に支えた。
 医業の傍ら、気仙の方言を一つの言語「ケセン語」ととらえ、その研究をライフワークとして取り組み、数々の著作を世に送り出してきた。敬虔(けいけん)なカトリック信徒で、ケセン語による新約聖書翻訳も手掛け、平成25年にはローマ教皇から「バチカン有効十字勲章」を受けている。
 今回の表彰は、「消滅の危機にあるケセン語の記録・普及・啓発に尽力し成果をあげるなど、わが国の国語施策の進展に多大な貢献をしている」としてのもの。
 市役所の表敬訪問では表彰状を戸田市長に披露。市長は「信念をもってケセン語を深く探求して記録に残し、たいへんすばらしい業績をあげられている。山浦先生はまさに気仙の宝」と賛辞を贈った。
 山浦さんは「ズーズー弁と呼ばれ、笑われてきたケセン語が、日本国の公認を得たというのが本当にうれしい」と喜びを語り、方言学者やカトリック関係者の支えにも感謝を示した。
 昭和60年から手掛けてきた学術論文や単行本、講演など合わせて1000を超える目録を市長に贈呈。「ケセン語は〝無形文化財〟。人口も減り、消滅の危機にある言語ともいわれるが、何とか次の世代へ伝える施策をしてもらいたい」と呼びかけた。