上有住の滝観洞 年間入洞者1万人突破 震災前の水準に戻る 住田

▲ 夏場にかけて家族連れなどで活況を呈した滝観洞

 住田町上有住にある滝観洞の本年度(2〜11月)入洞者が、平成22年度以来9年ぶりに1万人を突破した。今年3月に釜石花巻道路が全線開通したことで、交通アクセスが大幅に向上。さらに、洞内滝のライトアップが関心を集めたほか、広域的な広報宣伝活動も奏功した。関係者は東日本大震災以降遠ざかっていた「大台超え」を喜ぶとともに、さらなる誘客に意欲を見せている。


自動車道の全線供用で交通アクセスが向上

 

 全長3635㍍、高低差115㍍にも及び、国内屈指の鍾乳洞として知られる滝観洞。観光洞部にはライトアップされた鍾乳石が輝き、岩肌や地下水などによる神秘的な光景や、洞内滝としては国内屈指を誇る最奥部の「天の岩戸の滝」が魅了する。
 滝観洞を管理する住田観光開発㈱によると、本年度10カ月間の入洞者は1万930人。すでに30年度の年間入洞者9229人、29年度の同8559人を上回っている。
 滝観洞周辺は長らく交通の難所とされてきたが、平成20年に釜石花巻道路の「滝観洞インターチェンジ(IC)」が供用開始。この効果により、20〜22年は年間入洞者が1万人を大きく超えた。しかし、23年3月の東日本大震災で一時休業を余儀なくされ、再開後も客足が戻らない状態が続いた。
 今年3月、釜石花巻道路が待望の全線開通を果たし、三陸沿岸道路とも接続。内陸部はもちろん、気仙両市からのアクセスも飛躍的に向上した。町内の観光関係者は「1万人復活を」を合言葉に、PR活動を展開してきた。
 本年度は予想通り、乗用車で訪れる個人客が増加。洞内の気温は常に10度前後で、毎年、涼を求める観光客らでにぎわいをみせる夏場にかき入れ時を迎える。好天も後押しした今年は特に活況を呈し、8月の入洞者は前年比1・4倍増の4484人となった。
 また、近隣のJR釜石線・上有住駅周辺で、のり面の樹木撤去が行われ、滝観洞から列車が走行する光景が見えやすくなった。休日には、洞内探訪前後にSL銀河を眺める姿も目立った。
 住田観光開発㈱の松田栄社長は、本年度実績について「内陸部、沿岸部ともにアクセスが格段に向上したことで、個人客が来やすくなったのが大きい。加えて、照明設備のリニューアルで滝を青く染めたことが好評を呼んでいるほか、前年以上に宣伝広告に力を入れた効果も出ている」と分析する。
 さらに、今後の来訪増に向けては「滝観洞の名物である『滝流しそば』を生かした企画をはじめ、食にかかわる仕掛けを積極的に展開したい」と語る。
 滝観洞は2月まで冬期営業体制をとり、入洞は団体予約対応を除いて原則、土曜日と日曜日、祝日としている。受付時間は午前8時30分〜午後4時。入洞のみの営業で、食堂や滝流しそばは、来年3月末まで休業。問い合わせは同センター(℡48・2756)へ。