循環型社会の構築目指す 地域づくり推進協発足 陸前高田

▲ 再生可能エネルギーの導入など、循環型地域づくりに関して検討する協議会が設置された

脱炭素型事業など検討

 

 陸前高田市の第1回循環型地域づくり推進協議会(会長・戸羽太市長)は19日、高田町の市コミュニティホールで開かれた。同協議会は同市が提案した事業が本県で唯一、国の「脱炭素イノベーションによる地域循環共生圏構築事業」に採択されたことを受けて発足。同事業では、森林などの地域資源を生かしながら、地球温暖化の原因とされるCO2の削減といった環境問題や地域経済の発展などの複合的な課題の解決に取り組んでいく。
 国の採択を受けたのは、「脱炭素による『ノーマライゼーションという言葉のいらないまちづくり』の可能性調査事業」。この事業で市は、「環境」「経済」「社会」をトータルで向上させていくというSDGs(エスディージーズ)の考え方にも沿いながら、地域の特性や資源を生かした脱炭素型事業の推進を図る。
 協議会は、市内の農協、漁協、森林組合、商工会、観光物産協会をはじめ、農林水産業者、女性団体の代表者など14人で構成。事業推進にあたっては、陸前高田しみんエネルギー㈱、㈱フソウ、レコテック㈱、㈱森のエネルギー研究所の関係者が調査業務などを請け負う。
 この日は、しみんエネルギーの小出浩平社長が▽地域コミュニティーの活性化▽高齢者が使いやすい移動手段の構築▽地場産業の活性化──といった同市の地域課題に言及したうえ、同事業において木質バイオマスや生ごみ等を利用した再生可能エネルギーによる足湯・銭湯などの開設をはじめ、電気バスなどのいわゆる「スローモビリティ」の運用を検討している段階と説明した。
 これを踏まえ、森のエネルギー研究所は「化石燃料を民有林から切り出した木材によるバイオマスに切り替えることで、地域の外に出ていたお金を地域内で循環させることができる」などと解説。
 山に放置された残材を搬出するため小規模自伐型林家を支援し、地域経済の活性化を図ろうと全国的に取り組まれている「木の駅」のテストイベントを、来年1月に同市で実施するとした。
 また、生ごみや下水汚泥を利用したメタン発酵によるエネルギー創出の可能性については、フソウとレコテックの社員が説明。他市の事例を示しながら、「プラント化の導入コストはあるが、ガスを取り出したあとの液体は無料の液肥として水田にまくことができ、ごみ処理費用削減にも大きな効果を上げている」などと述べ、今後は市内の一般家庭や飲食店などから年間どの程度の生ごみが出ているか調査を行うとした。
 委員からは、「この事業が進めば、放置された山林にも人々の目が向くかもしれない」「山、川、海のサイクルは一体。森をきれいにすることは大事」「液肥によって肥料代が安くなるのはいいこと。あとはどんな成分が含まれているか詳しく分かれば説明もしやすい」といった声が上がった。
 さらに、「テーマを重くしすぎると、人が離れる。地域の人が『何をやっているか分からない』ということがないよう、みんなで一体となり、明るく楽しく取り組んでいく必要がある」「生ごみを集めるコストなども重要な問題」といった意見も寄せられた。
 同協議会は来年1月中に、向こう10年間のロードマップを作成。並行して、今後は市民との意見交換会の開催、「木の駅」プロジェクトのテスト開催、メタン発酵の体験などを行っていくとしている。