復興の歩みを世界へ 聖火リレーのルート決定 県がランナーの一部発表

大和田海雅君

清水裕真君

熊谷侑希さん

2020年東京オリンピックの聖火リレー(3月26日〜7月24日)について、同オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会がこのほど、詳細ルートを発表した。県内は6月17日から同19日にかけて聖火が運ばれる。気仙は18日に大船渡、陸前高田両市を通ることとなっており、東日本大震災復興の歩みを世界に向けて発信する。聖火ランナーの顔ぶれも決まりつつあり、五輪ムードが徐々に高まっている。


気仙は来年6月18日

 

 「Hope Lights Our Way/希望の道を、つなごう。」をコンセプトに掲げる東京オリンピックの聖火リレーは、来年3月26日に福島県をスタートし、121日間で47都道府県を巡る。県内は6月17〜19の3日間、28市町村の264区間(52・16㌔)で運ぶ。
 このうち、気仙でのリレーは18日で、大船渡市が「夢海公園―サン・アンドレス公園」、陸前高田市が「奇跡の一本松―アバッセたかた」というルート。アバッセたかたでは、セレブレーション会場として聖火到着を祝うイベントが行われる予定。震災の後方支援に尽くした住田町はルートから外れた。
 ルート発表に合わせ、県(東京2020オリンピック・パラリンピック聖火事業等県実行委員会)では、66人の聖火ランナーのうち、本人から承諾を得た52人について発表した。
 その顔ぶれは、市町村からの推薦や公募をもとに選考。各界の著名人では、八幡平市出身のスキージャンプ選手・小林陵侑さん、北上市出身のプロボクサー・八重樫東さん、三陸を舞台とした連続テレビ小説「あまちゃん」主演女優の「のん」さんらが名を連ねる。
 気仙からは、大船渡市のNPO法人・さんりくWELLNESS理事長の熊谷侑希さん(34)、陸前高田市立高田第一中学校2年生の清水祐真君、住田町立世田米中学校2年生の大和田海雅君の3人が選ばれた。
 熊谷さんは子どものころからさまざまなスポーツに親しみ、大船渡高校から日本女子体育大学に進学。震災後に東京からUターンし、さんりくWELLNESSを設立。市内仮設住宅や災害公営住宅での運動教室などを行っている。平成28年の希望郷いわて国体には、ラグビー岩手代表の一員として出場している。
 「震災によってコミュニティーが失われたり、変化した方々が聖火リレーを機に集い、再会を喜ぶ機会になればと思っている。また、『聖火リレーを見に行こう』という思いが、健康づくりの意欲につながってくれれば。聖火を手に走るのがとても楽しみ」と話す。
 清水君は日ごろから水泳やボッチャで体を動かす。両親から選出の知らせを聞いたといい、「初めは驚いたけど、徐々にうれしさがこみ上げてきた」と笑顔を見せる。
 学校生活を送る中で、全国各地から被災地復興のために思いを寄せてくれる人たちからの支援もたくさん受け取ってきた。「当日は緊張すると思うけど、陸前高田の復興のために支援をくださった多くの方々へ、感謝の思いを伝えられるように笑顔で走りたい」と力を込める。
 大和田君は、津波で当時住んでいた大船渡市末崎町の自宅が半壊。野球のスポーツ少年団活動場所確保や、地元漁業者への支援など、さまざまな団体が復旧・復興を後押ししてきた姿を目にしてきた。住田町内の学校に移ってきた時に、温かく迎え入れてくれた住民や同級生らの優しさも胸に刻んだ。
 「選ばれたと知った時は、うれしさよりも驚きの方が大きかった。これまで支援してくれた方々に、元気に頑張っている姿を見せたいと思って応募した。復興に向けて温かく見守っている人たちへの感謝も込めながら一生懸命走りたい」と抱負を語っている。
 聖火はオリンピック発祥の地ギリシャで採火。大会組織委ではリレーに先立つ3月に岩手、宮城、福島の被災3県で「復興の火」として巡回展示する。気仙では同23日に大船渡市大船渡町のキャッセン大船渡に展示する計画だ。
 気仙の聖火リレールートは別掲の通り。

 

金野拓翔君

企業公募のランナーも当選喜ぶ

 

 2020年東京オリンピックの聖火リレーでは、パートナー企業が一般公募したランナーも地元を走る。気仙でも当選者が見られ、喜びをかみしめつつ震災からの復興を力強く発信しようと意気込んでいる。
 パートナー企業は、日本コカ・コーラ㈱、トヨタ自動車㈱、日本生命保険相互会社、日本電信電話㈱の4社。当選者には今月25日以降、同オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会から正式決定通知が順次送られる。
 当選者の一人、陸前高田市米崎町の金野拓翔(ひろと)君(米崎小6年)は「震災後の支援に対してお礼がしたい」と応募した。「一生の思い出に残ること。走ることが決まりとてもうれしいです」と喜ぶ。
 9月に開館した高田松原津波復興祈念公園内の震災津波伝承館を見学し、改めて津波の脅威を学んだ。「震災を忘れてはいけないと思った。そうした思いを持ちながら聖火ランナーとして走りたい」と思いを新たにする。