一年の幸せ願う 「初日の出号」を運行 リアス線の盛─唐丹駅間で 三陸鉄道

▲ 車窓から見える吉浜湾をバックに乾杯する乗客

 三陸鉄道㈱の企画列車「初日の出号」は1日、リアス線の盛─唐丹駅間で運行された。県内外からの乗客が太平洋から昇った朝日を拝み、一年の幸せを願った。
 初日の出号は、平成12年元旦に初運行し、東日本大震災後は被災した鉄道が全線復旧した26年の翌年に復活。同年から毎年運行している。
 震災後6回目となった今回は、地元の任意団体・ケセン元気玉プロジェクト(小野寺明子代表)と大船渡温泉が協賛し、大船渡市観光物産協会が協力。気仙内外から約40人が乗車した。
 運転手を務めたのは、三鉄の元南リアス線運行部長の吉田哲指令部長(56)。小野寺代表や三鉄社員、地元ボランティアらが乗客をもてなした。
 列車は午前6時5分に盛駅を発車。乗客は、移動する車内で振る舞われたそばやもちの〝おちつき〟、大船渡市の飲食店「華勢」によるおせち料理、地酒の酔仙、甘酒などを味わい、相席になった人や隣の席の人らと団らんした。
 三陸町の吉浜湾が一望できる線路上で列車が止まり、乗客は水平線から昇る初日の出に期待をかけて車窓から海を眺めたが、厚い雲が空を覆ったため断念。唐丹駅に向かい、付近の神社で祈とうを行ったあとに朝日が現れ、同駅ホームや帰りの車内から一年の幸福を願った。
 盛駅に戻る途中では、甫嶺駅で地元住民が権現舞を披露。恋し浜駅では乗客全員での記念撮影なども行われた。
 猪川町に実家があり、神奈川県から帰省して母と一緒に乗車した新沼正晴さん(57)は「神社では家族の健康を願った。前夜の強風で列車が運行されるか心配したが、無事に運行され、美しい海の風景を眺めることができたので良かった」と話していた。
 昨年3月に開通したリアス線(盛─久慈、163㌔)は、同9月の台風19号で甚大な被害を受け、釜石駅以北は現在も一部区間が不通の状態。復旧工事後、今年3月下旬に全線再開する予定で、三鉄社員らも「復活」への思いを込めて初日の出号を運行した。
 吉田指令部長は「三鉄は全国の方々から温かいご支援をいただき、支えられている。今回、みなさんの笑顔を見ることができて良かった」と明るい表情を見せていた。