よりよい定住自立圏形成を 共生ビジョン懇談会始動 大船渡市と住田町

▲ 大船渡市と住田町による定住自立圏共生ビジョン懇談会が初会合

 大船渡市と住田町による「定住自立圏共生ビジョン懇談会」の初会合は7日、同市役所で開かれた。同ビジョンの策定に向け、両市町の民間や地域関係者らの意見を反映させようと設置したもので、委嘱した委員17人全員が出席。委員らは、定住自立圏構想の概要や今後の取り組み内容などを確認し、よりよい定住自立圏の形成に向け、次回から同ビジョン案を巡る話し合いを進めていくこととした。

 

 定住自立圏は、一定の要件を満たした市(中心市)と近隣市町村が連携、協力し、必要な生活機能等を確保することで地域における定住の受け皿となるもの。
 気仙では平成30年1月から、2市1町による検討を開始。この中で、陸前高田市は「当面は復興事業の推進が最重要・最優先につき、復興事業の完了時点において改めて判断したい」としたため、3市町で今後の方向性等を確認、共有したうえで、大船渡市が中心市となり、住田町と先行して形成を進めることになった。
 両市町議会は昨年6月、定住自立圏形成協定の議決に関する条例案を可決。同8月には、大船渡市が圏域として必要な生活機能の確保に関し、中心的な役割を担う意思を有することなどを明らかにする「中心市宣言」を行った。
 同10月には、両市町が定住自立圏形成協定を締結。圏域における具体的な取り組みなどを明記した「定住自立圏共生ビジョン」の策定作業に入った。
 懇談会は同ビジョンの策定に向け、民間や地域関係者の意見を広く反映させようと設置。両市町の福祉、産業、商工、観光、公民館などの関係機関、団体等から委員を委嘱した。
 委嘱状を交付した戸田公明市長は「定住自立圏共生ビジョンの策定に向け、諸事項の検討を深めてもらいたい」とあいさつ。神田謙一町長も「圏域において皆さんの意見、知恵を拝借しながら地域づくりを進めていきたい」と述べた。
 続いて、会長に山本健岩手県立大学総合政策学部教授を、副会長には金野千津社会福祉法人住田町社会福祉協議会事務局長を選出。山本会長は一関・平泉の定住自立圏共生ビジョン策定に携わった経験に触れ、「委員の皆さんから忌憚(きたん)のない建設的な意見を受けながら、ビジョンをつくっていきたい」とあいさつした。
 続いて、事務局が定住自立圏構想や定住自立圏共生ビジョンの概要、これまでの経過、今後のスケジュールを説明。委員らから質問や意見を受けた。
 このうち、同ビジョンは宣言中心市(大船渡市)が形成した定住自立圏を対象として、圏域の将来像や具体的な取り組み等の所定の事項を記載するもの。ビジョンの策定に当たっては、国の定住自立圏推進要綱に基づいて①定住自立圏および市町村の名称②定住自立圏の将来像③定住自立圏形成協定に基づき推進する具体的取り組み④定住自立圏共生ビジョンの期間⑤成果指標──を盛り込むことが定められている。
 ビジョンの期間は、おおむね5年間。ビジョンに基づき行う事業に要する経費には主に特別交付税措置がとられるほか、地域活性化事業債の充当などの支援がなされる。具体的な取り組み内容などを盛り込んだビジョンの素案は、次回会合で示すとしている。
 委員らは、財政支援の期限の有無、陸前高田市との連携のあり方などを質問。また、「地域活動に携わる住民の能力向上や、若者向けの人材育成を盛り込んでほしい」「ICT(情報通信技術)やAI(人工知能)の活用にも取り組んでいけるといい」「住民が〝自分ごと〟としてとらえ、少しでも多くの人を巻き込んで取り組める内容にしてほしい」などの提言を寄せた。
 懇談会は今月下旬から来月上旬の間に第2回を開催し、ビジョン案の協議を予定。策定に当たっては、両市町議会への素案説明、住民から意見を募るパブリックコメントの実施を計画する。策定後の令和2年度内には、ビジョンに位置付ける取り組みを進めていく見通し。
 懇談会の委員は次の通り(任期は2年間)。
 泉加代子(住田町地域公共交通会議委員)小野香江(世田米学童クラブ指導員)金野千津(社会福祉法人住田町社会福祉協議会事務局長)金野律夫(大船渡地区公民館連絡協議会長)紺野明(大船渡市農業協同組合営農部営農企画課長)
 佐々木晋(大船渡商工会議所企画総務部次長)佐藤英司(住田町商工会事務局長)佐藤敬生(一般社団法人大船渡市観光物産協会主任)佐藤忠(気仙地方森林組合参事)佐藤良(一般社団法人未来かなえ機構事務局長)白﨑陽彦(一般社団法人大船渡市体育協会事務局次長)
 高橋靖(住田町自治公民館連絡協議会長)千葉孝文(住田観光開発㈱取締役)中村純代(㈱キャッセン大船渡リテールマネージメント担当)奈良朋彦(一般社団法人邑サポート代表理事)山崎高範(社会福祉法人大船渡市社会福祉協議会課長補佐)山本健(岩手県立大学総合政策学部教授)