予定日繰り上げも提示 BRT区間の鉄道事業廃止 JRが運輸局の意見聴取で

▲ 東北運輸局で行われた鉄道事業廃止届け出にかかる意見聴取

 東日本大震災後にBRT(バス高速輸送システム)での運行となったJR大船渡線気仙沼―盛間(43・7㌔)と、気仙沼線柳津―気仙沼間(55・3㌔)について、JR東日本が昨年11月に国土交通大臣あてに届け出ていた鉄道事業廃止にかかる関係自治体や同社からの意見聴取が9日、宮城県仙台市の国交省東北運輸局で行われた。JR東はBRTによるサービス維持充実の姿勢を改めて示し、当初11月13日としていた廃止予定日を4月1日に繰り上げる考えも提示。陳述に立った関係自治体はBRTが地域の足として受け入れられている現状を語り、廃止日繰り上げへの異議は聞かれなかった。

 両区間は平成23年、東日本大震災津波で大きな被害を受け、気仙沼線は24年8月、大船渡線は25年3月から、鉄道跡を舗装した専用道を整備するなどしてBRTの運行がスタート。JR東は鉄道復旧には多額の費用を要することなどから、27年7月にBRTでの本格復旧を沿線自治対に提案し、28年3月までに沿線5市町すべてが受け入れた。
 昨年11月、JR東は「合意後、将来にわたりBRTを運行するための課題整理等のめどがおおむね立ってきたため」として鉄道事業の廃止届け出を国交大臣あてに提出していた。
 この際、JR東は「BRTは道路運送法に基づき運行し、鉄道事業廃止による運行・サービス水準の変更はない」と明言していた。
 届け出を受けた東北運輸局による意見聴取は、鉄道事業法に基づいて開催。廃止した場合の公衆の利便確保について関係自治体やJRから聞くもので、公開で行われた。
 陳述者として、岩手、宮城両県、気仙沼市、南三陸町、JR東の担当者が出席。
 大船渡、陸前高田両市は欠席。その理由について、大船渡市商工港湾部は「BRT本復旧方針を受け入れる際に、JRに対する要望書を提出し、持続的な運行確保の確約があったほか、サービス水準維持、さらなる利便性の向上などについても前向きな回答があった」、陸前高田市市民協働部は「BRTの運行継続、鉄道に基づく運賃算定、BRTの駅をJRの駅として位置付ける、という3項目を要望し、すでに確約されていることから、改めて公の場で意見を述べる必要はないと判断した」などとする。
 聴取は同運輸局鉄道部長の保刈芳信氏が実施した。
 はじめにJR東の執行役員総合企画本部復興企画部長の大口豊氏が陳述。BRT化の経緯に触れ、大船渡線については運行本数を震災前の1・5倍~2・5倍とし、鉄道と同水準の運賃を維持し、沿線自治体の要望で10の新駅を設けるなどのサービス水準維持向上の取り組みを説明した。
 そのうえで「鉄道事業廃止後も現行のサービス水準を維持し、他の交通機関との連携など利便向上を図る」と改めて明言。
 届け出の際に今年11月13日としていた鉄道事業廃止予定日については、「公衆利便確保に引き続き当社が取り組む」として、4月1日に繰り上げる考えも示した。
 続いて、岩手県政策地域部交通政策室特命参事兼地域交通課長の渡辺謙一氏が陳述。「地域の公共交通として受け入れられているとともに、一定の利便性を確保している」と評価し、引き続き利用者や沿線自治体の声を取り入れながら、利便性維持確保に取り組むよう期待した。廃止予定日繰り上げについては「意見はない」と述べた。
 宮城県、気仙沼市、南三陸町の担当者も地域内交通の利便確保状況を評価し、廃止日繰り上げへの異議はなかった。気仙沼市と南三陸町はあわせて、都市間交通充実や速達性確保の必要性も訴えた。
 鉄道事業法では、意見聴取の結果、予定日より前に廃止しても公衆の利便を阻害するおそれがないと国交大臣が認めた場合は、日程を繰り上げられると定めており、廃止が前倒しされる可能性が高いものとみられる。