〝被災地から被災地へ〟 洗浄ノウハウ広く共有を 陸前高田の団体を事務局に 「写真救済ネットワーク」設立

▲ 東日本大震災の被災地で構築された写真洗浄のノウハウを、別の被災地でも伝える(写真は長野県で行われた講習会)

 陸前高田市を拠点に「思い出の品」返却などの活動を展開する(一社)三陸アーカイブ減災センター(秋山真理代表理事)が事務局となり、災害によって汚れてしまった写真の保全等に関する活動を展開する任意団体「被災写真救済ネットワーク」がこのほど設立された。11日で東日本大震災の発生から8年10カ月。大震災被災地におけるこれまでの活動から、今も「思い出の品」が被災者の心の支えとなっていることをよく知る人々が、写真洗浄の技術を伝える全国的なつながりを構築することで、「一枚でも多くの思い出の品が被災した人々の手元に残るよう、活動を継承していきたい」とする。

 

震災から8年10ヶ月

 

 同ネットワークは、東日本大震災以後、自然災害被災地において写真洗浄活動に携わってきた有志らが設立。三陸アーカイブ減災センターの秋山代表理事と、岡山県倉敷市の社会福祉協議会と連携して豪雨災害被災地である真備町の写真洗浄などに従事する「あらいぐま岡山」の福井圭一顧問が共同代表を務める。
 東北の大震災後、日本各地で大規模災害が相次いで発生。特に近年は台風などによる豪雨災害が頻発し、水や泥をかぶってしまった写真の保存と洗浄、返却のノウハウの普及啓発の必要性が高まっていることが、設立の背景として挙げられる。
 同ネットワークの主な活動内容は、▽被災写真の応急処置ノウハウの普及啓発▽ネットワークの構築と活動拠点の紹介▽被災地で写真洗浄を行う団体等の設立支援▽「思い出の品」を扱う自治体に対する助言等の支援──などで、写真洗浄を必要とする地域への情報提供、平時から「ノウハウを学んでおきたい」という人たちを対象としたワークショップ開催なども行うものとする。
 全国の被災自治体でそれぞれに動いていた個人・団体を横につなぐことで、写真救済活動のスタンダードを構築し、それぞれの被災地域に根付かせていく〝ハブ〟となることが同ネットワークの狙いだ。
 現在、富士フイルムと同センターが共同で、写真洗浄のノウハウビデオを制作中。また、同ネットワークのサイト(http://rescue-photo.net/)からは応急処置の方法を説明したチラシもダウンロードできる。
 秋山代表理事は、「被災直後は生活の立て直しに精いっぱいで、写真のことは後回しになりがち。泥をかぶった写真でもきれいにできるんだということを知らなければ、そのまま捨てられてしまい、後悔することになる。最低限、乾燥さえしておけば、ほとんどの写真は救えるという知識だけでも知っていてもらえたら、残せる思い出がたくさんある」といい、被災地域の避難所などで配ってもらえるようにしたいとする。
 「陸前高田市 思い出の品」として、同市をはじめ、仙台などの近郊都市、首都圏で広く返却会を開く中、発災から時間が経過した今も写真を探しに来る人がいること、写真を見つけた人たちの喜びを目の当たりにしてきた同代表理事は、思い出の品を残す意義を再認識する日々だという。
 同時に、全国で災害が多発する中、これまで写真洗浄に携わってきた人たちだけで被災地支援を行うことには限界がある。
 写真の洗浄や返却活動が長期にわたる現実も知っている。さらに、被災地の中で、被害に遭わなかった人が洗浄ボランティアに携わるといったことが、住民の分断を防ぎ、地域コミュニティーの維持につながるケースも見てきたからこそ、同代表理事は「できるだけ地元の人が、その地域の中で活動を担い、自立してやっていけることが理想」といい、団体の立ち上げ支援には特に力を入れたいとする。
 同ネットワークはすでに、昨年10月に発生した台風19号の被災地である長野県に入り、写真洗浄に取り組むグループの設立支援、写真救済のノウハウ伝授などを行った。
 東日本大震災の被災地で培われた技術と知識、失敗を伝えることも、「震災の教訓伝承活動の一つではないか」と同代表理事はいい、〝被災地から被災地へ〟と知見を広げていく意義を同ネットワークを通じて伝えたいとしている。