地域の小正月行事再現 蛸ノ浦の住民ら「なまこ引き」など行う 大船渡(別写真あり)
令和2年1月15日付 3面

大船渡市赤崎町の蛸ノ浦地区公民館(志田安雄館長)で13日、かつて地域で行われていた小正月行事を次世代につないでいくとともに、世代間交流を深めようという「みんなで楽しむ小正月行事」が催された。豊作などを願う「あわぼう」や「なまこ引き」など、現在は見られなくなった風習を子どもと大人が一緒に体験しながら交流を深めた。
この催しは、今では見る機会が少なくなったり、途絶えてしまった行事などを調査している蛸ノ浦地区の昔を語る会(崎山陽一会長)が、地元老人クラブ、公民館との共催で実施。途絶えてしまった行事を再現し、記録に残すことで、次世代に継承していこうと昨年初めて企画された。
今年は地元の児童や大人たちの合わせて約30人が参加。会場にはみずき団子のほか、ホオノキなどの幹を花形に削ってクリや竹の枝に刺す「あわぼう」、ハギの枝に小さな餅を飾る「もち花」が飾られて小正月の雰囲気を演出。
はじめに餅つきが行われ、子どもたちが大人の手を借りながらきねを振るった。
このあと、田んぼや畑作地を荒らすモグラやネズミの被害防止や豊作、大漁、家の隆盛を願って行われていたという「なまこ引き」を実施。
なまこ引きは、わらで編んだ袋にナマコを入れて家の周りを3周するもの。「やらぐろうやら とんぶくろ ソバの皮も ほんがほがー」などと唱えながら、そば殻やもみ殻、まめ殻をまきながら行う。かつては同町の一部地域で行われていたが、戦後に途絶えてしまったという。
今回は、志田館長や地域住民が高らかに唱和しながら、そば殻などをまき、子どもたちがナマコを引いて、同公民館の敷地を3周。
長く地元で暮らす住民でも見たことのある人は少ないというこの風習。参加者らは興味深そうに眺め、先祖の営みに思いをはせた。
志田館長は「こうした催しを年に1回でも地域で行うことが大事。交流を深める機会になれば」と話していた。