新春インタビュー2020 復興と発展に向けて①/大船渡市長・戸田公明さん
令和2年1月16日付 1面

令和最初の新年を迎え、東日本大震災からの「復興・創生期間」も残り1年余りとなった。今年の新春インタビューは各界のリーダーに登場願い、気仙の復興とその後の地域発展のあり方などについて語ってもらう。
生産性を上げ 所得向上を
──震災から今年で丸9年となり、市復興計画の期間も残り1年余り。これまでを振り返っての所感と、最終年度の取り組みは。
戸田 震災後は、国内外から支援をいただき、市民も励まされ、勇気づけられて、一丸となって復興に取り組んできた。復興も今終盤を迎えつつあり、ゴールが見えてきたというところ。
この期間を振り返って感じるのは、「継続は力なり」。これまで庁内で復興推進本部会議を定期的に開き、指示と確認、フォローアップを重ねてきた。住民にも情報開示をしながら、できるだけ手をつなぐ形で取り組んできた。
そこで一番難しかったのが、被災跡地の利活用。当初から将来の問題になるとして国に対応を求め、さまざまな新制度を作ってもらえた。
そういった中で、今は三陸町越喜来の甫嶺小学校校舎・校庭の利活用、浦浜の夏イチゴ栽培施設、同町の綾里復興公園、赤崎町の中赤崎スポーツ交流ゾーンまではレールが敷かれた。これからは、浦浜と末崎町細浦の新たな計画を作り、跡地に立地する事業者を見つけなければならない。
ソフト面では、被災者支援に尽きる。ご家族を亡くした方へのケア、1人暮らし高齢者への健康支援、災害公営住宅のコミュニティーにも支援が必要なところがある。
計画の最終年度に当たっては、復興記録誌の編集や防災学習施設の整備、市の慰霊碑建立などを考えている。復興・創生期間満了の前後に今まで支援をいただいた方々を招き、これまでの感謝の気持ちを伝え、市内の復興を発信する企画も、何らかの形でやるべきではないかと思う。
──復興後を見据えた地域づくりも本格化している。特に優先すべき施策は。
戸田 特に優先すべきは、「まち・ひと・しごと創生総合戦略」「市民協働」「ILC(国際リニアコライダー)と共生するまちづくりビジョン」の3点。
総合戦略は、新年度から第2次の取り組みに入る。人口減少時代を乗り切っていくため、生産性を上げて所得を向上させていけるよう強く意識し、新たな仕事もつくらねばならないと思う。
市民と行政との協働推進は、地域力の向上につながる。新年度は庁内の組織体制を調整して新たな部署を設け、本格的に取り組んでいきたい。
ILCについては、年度内にアクションプランを策定し、北上山地への誘致が決まれば、いつでも国に準備ができているとアピールできるようにしたい。道路整備、物流拠点としての情報発信の強化・要望も行っていく。
──昨年は市職員の逮捕という大きな事件があった。市民からの信頼回復、再発防止に向けた考えは。
戸田 市独自の再発防止策、業務改善案を作り、実行している。昨年9月に市議会からの提案があり、第三者委員会からも同12月に報告書が提出され、市の再発防止策への改善要望、再発防止策の提言などが示された。
これらを取り入れるべく準備中であり、業務改善案に全て反映させていこうと思う。その後も進ちょくを再認識しながら、徹底的に進めていく。市議会や市民にも情報を発信していきたい。
──今後の地域発展には、広域、県との一層の連携強化も求められるが、具体的な取り組みは。
戸田 昨年、住田町と定住自立圏協定を結んだ。両市町の共通の悩みを、共通の取り組みで解消を目指していく。
この前、初めて開いた懇談会の資料には、地域医療体制の充実や公共施設の相互利用促進など、複数の想定できる取り組みを示した。実施に当たっては国の補助金等もあるので、そういったものも見ながら進めていきたい。
気仙をはじめ、広域での連携は必要。ILCの誘致実現に向けては、県や関係機関との連携が求められる。
県内の沿岸市町村による三陸連携会議では、復興後のさらなる発展を目指している。最近は課題が山積しているので、沿岸主要市の一つとして、関係機関への提案、情報発信も進めていきたい。
(聞き手・三浦佳恵)