国内最大規模の施設完成 太平洋セメント㈱バイオマス発電所竣工式 大船渡(別写真あり)

▲ 神事で大船渡バイオマス発電所の安全な操業を願った竣工式

 太平洋セメント㈱(不死原正文代表取締役社長)と電力供給会社のイーレックス㈱(本名均代表取締役社長)が共同で設立した大船渡発電㈱(相良安廣代表取締役社長)の「大船渡バイオマス発電所」が、大船渡市赤崎町の太平洋セメント㈱大船渡工場敷地内に完成し、29日に同工場などで竣工式が行われた。参加者らは、国内最大級の規模を誇るバイオマス発電所の機能に理解を深めながら、新たな発電事業が地域の振興や発展につながるよう期待を込めた。

 

今月から営業運転

 

来賓や地域住民向けの施設見学会も

 大船渡発電は、太平洋セメントとイーレックスが共同出資し、平成28年8月に設立。東日本大震災の津波で被災、休止した大船渡工場内の発電所をバイオマス発電所として再建し、工場内の電力として利用するとともに、売電事業にも参画することとした。
 発電所は、大船渡工場敷地内の旧事務所跡地など(敷地面積約1万5000平方㍍)を利用し、29年9月に着工。事業費は約235億円。
 循環流動層ボイラと再熱式蒸気タービンを採用した発電施設を整備し、昨年9月からは試験、調整運転を実施。今月1日から営業運転に入った。
 竣工式は、施設の完成と営業運転開始を祝して企画され、大船渡工場の体育館で執り行われた神事には、来賓や関係者ら約50人が出席。祝詞奏上や玉ぐし奉てんなどが行われ、出席者らは今後の安全な操業を祈念した。
 続いて、来賓や地域住民ら約50人を対象にした見学会を実施。参加者らは発電所の概要説明を受けた後、2グループに分かれて発電機を有するタービン室と制御室を見学した。
 相良社長は「震災で被災したセメント工場の主力設備のうち、火力発電所が復旧していなかったが、環境に優しいバイオマス発電所として再建ができた。あの日から9年近くがたち、この日を迎えることができて感慨深い。今後は安全で安定的な運転に努め、地域の未来に火をともす存在となりたい」と決意を新たにした。
 その後は会場を大船渡町の大船渡プラザホテルに移し、約100人が出席して記念式典を開催。不死原社長は関係者への感謝の言葉を交え、「竣工式を節目とし、なお一層、社会貢献と皆さまのご期待に添えるよう、これまで以上に地域の発展に協力できるよう、一生懸命工場を運営していきたい」とあいさつ。
 本名社長は「発電機をきちんと回すことがわれわれの役目。今後もますますの支援、ご協力をいただきたい」と述べた。施工業者らへの感謝状贈呈も行い、改めて施設の完成と営業運転開始を祝福し合った。
 発電に使う主な燃料は、パームヤシ殻と、パームオイル搾油工程で廃棄されていたパーム空果房(くうかぼう)。マレーシアやインドネシアから船で輸入する。
 発電所のボイラー内では、これらバイオマス燃料と石炭を9対1の割合で燃焼。そこで発生した熱で水を蒸気に変え、タービンを回転させて発電機を作動させ、電気を生み出す。
 発電出力は国内最大規模の75メガワット、年間発電量は約52万メガワットアワーで、一般家庭約11万9000世帯分の年間電力消費量に相当。「再生可能エネルギー固定価格買取制度」を活用し、今後20年にわたり発電、売電する計画。発電した電力は全量をイーレックスへ売却し、同工場が必要分の電力を購入する。
 国内のバイオマス発電所としては、国内最大級の規模となり、年間約30万8000㌧の二酸化炭素削減に貢献。燃料を燃やした際の灰の処理、排気ガスの清浄化など環境負荷の削減も図る。