支え合い交通のモデルに 横田町で実証実験開始 課題や利用者のニーズ探る 陸前高田(別写真あり)
令和2年2月5日付 7面

陸前高田市横田町における「新たな移動手段」に関する実証実験は4日に開始された。3月末まで、毎週火曜日の午前中に乗り合いバス型の車両を運行し、自力でまちなかまで移動するのが困難な高齢者に外出の機会を提供。実験期間中に課題や利用者のニーズを洗い出し、交通事業者との共存が可能な形で地域の「支え合い交通」を本格運行するための方策を探る。
乗り合いバス型車両を運行
3月まで2カ月間
沢沿いに家が多く、県道を走る路線バスを利用しにくいうえ、市街地や医療機関からも遠いといった同町の地域公共交通の課題解決を図るため、横田町民が主体となって実施する実証実験。町内から週1回、金融機関や薬局などが多い竹駒町を経由し、高田町の市街地まで高齢者を送迎するという形で、まずは2カ月間の試運転を行う。
実験の実施主体は、住民有志による横田町交通研究会(村上豊繁代表)。利用希望者は事前登録が必要で、利用の際は2日前までに電話予約する。当日は基本的に町内のごみ収集ステーションが乗降場所となる。現時点で約20人が利用登録しているという。
運行初日となったこの日は横田地区コミセンで「出発式」を実施。村上代表(49)が「市の協力があって実験させていただけることがありがたい。やってみて初めて分かることもあると思う。利用してもらったうえでどんどん意見を言ってもらい、いい形で次のステップへ進めていきたい」と決意を述べた。
戸羽太市長は「運転免許証を返納したあと、どう移動していただくのか。まずは横田で先陣を切ってもらい、各地の交通課題の解決に結び付けていければ。法律などの壁はあるが、この実験が障壁に風穴を開けてくれるものと思う」と期待を寄せた。
実験中は、高田町にある「三陸おもてなしレンタカー」所有の電気自動車を利用する。1回あたりの定員は最大6人。同日は5人が乗車し、同研究会の登録運転手である多田幸喜さん(64)がハンドルを握る自動車を、地域住民や横田保育園児らがにぎやかに見送った。
利用者のうち、同町の標高が高い地域で1人暮らしをしているという村上淑子さん(79)は、まだ運転免許を返納していないものの、「いずれ必ず返すことになる。せっかくの機会だから、今後のことも考えて利用してみた。車内は快適。運転しなくなっても週1回は外出したいので、ぜひ(取り組みを)続けてもらえれば」と語った。
初回の運転手という大役を果たした多田さんは、「現役を離れたわれわれ世代が中心になってやっていかねばと思う。自分たちもいずれ年を取って、お世話になることもあるだろう。こうして地域で支え合っていかないと」と話していた。