27の具体的取り組み示す 懇談会の委員らに 定住自立圏共生ビジョン案 大船渡市と住田町

▲ 定住自立圏共生ビジョン案が示された第2回懇談会

 大船渡市と住田町による「定住自立圏共生ビジョン懇談会」(会長・山本健岩手県立大学総合政策学部教授、委員17人)の第2回会合は4日、同市役所で開かれた。この日、両市町は委員らに「定住自立圏共生ビジョン(案)」を公表。この中では、両市町が持続可能な地域社会の形成に向け、定住自立圏域として医療や福祉、産業振興、移住・定住促進などに関する27の具体的な取り組みを示しており、委員らが意見や提言を寄せた。同ビジョンは今後、両市町議会への説明や住民らへの意見募集などを経て、本年度内の策定を見込む。

 定住自立圏は、一定の要件を満たした市(中心市)と近隣市町村が連携、協力し、必要な生活機能等を確保することで地域における定住の受け皿となるもの。大船渡市と住田町は、同市が圏域として必要な生活機能の確保に関して中心的な役割を担う「中心市」となり、昨年10月に定住自立圏形成協定を結んだ。
 定住自立圏共生ビジョンは同協定に基づき、魅力ある定住自立圏を形成するため、圏域全体の将来像やその実現に向けて推進する具体的な取り組み内容を示すもの。懇談会はこの策定に向け、両市町の民間や地域関係者の意見を広く反映させるために設置された。
 第2回会合には、委員15人と両市町の担当職員らが出席。戸田公明市長、山本会長のあいさつに続き、協議に移った。
 協議では、事務局側が同ビジョン案を説明。委員らが質問や意見、提言などを行った。
 同ビジョン案によると、ビジョンの期間は令和2年度から6年度までの5年間。
 内容は①定住自立圏の名称②定住自立圏共生ビジョンの目的③圏域の概況④圏域の将来像⑤具体的な取組──で構成。圏域の将来像は、急速に進む人口減少・少子高齢化による地域への影響が懸念される中で、SDGs(持続可能な開発目標)の理念などの新たな視点を加え、「共通の課題解決に向け、圏域全体として魅力ある地域づくりを進める」としている。
 具体的な取り組みは、協定で規定した▽生活機能の強化▽結びつきやネットワークの強化▽圏域マネジメント能力の強化──の三つの視点から、医療、福祉、教育、産業振興、地域公共交通、地域内外の住民との交流・移住促進、圏域内市町の職員の交流などと各分野の事業を位置付け。それをもとに、両市町の既存事業をベースにした27の取り組みを盛り込んだ。
 「生活機能の強化」では、ICT(情報通信)ネットワークを活用した医療・介護事業の効率化とサービス向上を図る「地域医療介護情報ネットワーク等事業」や、訪日外国人観光客向けの観光ルート造成や受け入れ体制の整備などを行う「外国人観光客誘客促進事業」、遊休農地の有効活用を図るため、共同で情報交換や研修会などを行う「遊休農地活用事業」など20事業を挙げた。
 「結びつきやネットワークの強化」では、公共交通活性化の協議・共有を行う「地域間幹線系統にかかる地域公共交通確保維持事業」、圏域内への移住・定住を促進する〝移住コーディネーター〟を新たに配置するとともに、両市町の空き家バンクの一元化などを図る「移住・定住促進事業」など4事業を計画。
 「圏域マネジメント能力の強化」では、両市町職員を対象にこれからの職員像などに理解を深める「これからの時代に活躍する人材育成事業」など3事業を掲げた。
 委員らは、「圏域でのメリットや基本的な考え方をビジョンの中に載せてほしい」「移住・定住の促進を掲げているが、一時的な支援や空き家の仲介だけでは不十分。大事なのはずっと住み続けられる環境整備。持続的な支援を考えてもらいたい」「遊休農地の利活用を移住・定住と関連付けて取り組めないか」などの要望、提言を寄せた。
 共生ビジョンは今後、両市町議会への説明や住民らへの意見募集を行い、年度内には成案化する見通し。具体的な取り組みに掲げた重要業績評価指標(KPI)は、委員らの意見などを受けて見直しを図る。