先進地の取り組み学ぶ 大船渡地方農振研修会 鳥獣被害対策テーマに 住田で
令和2年2月8日付 1面
大船渡地方農業振興協議会(会長・神田謙一住田町長)による農業振興総合研修会は6日、住田町役場町民ホールで行われた。気仙でも日々深刻化している農作物の鳥獣被害をテーマとした講演では、官民一体で取り組んでいる福島県猪苗代町の事例を紹介。出席者は住民主体による被害対策や各市町村に専門職員を配置する重要性などに理解を深めながら、被害軽減に向けて意識共有を図った。
カギは「住民主体と専門職員」
気仙の農業者らが一堂に会し、野生鳥獣による農作物被害防止対策や魅力的な中山間地の実現に向けた取り組みを学ぶ機会として開催。大船渡地方農林水産振興連絡協議会が共催した。
3市町の農業関係者ら約160人が出席。開会行事で神田町長は「持続的な発展のためには、立地条件や多様な資源を生かした産地形成に加え、鳥獣被害対策も重要」とあいさつした。
引き続き、猪苗代町役場農林課農林整備係主事の飯田優貴氏(35)が講演。飯田氏は平成22年から同町で鳥獣被害対策の専門職員として勤務し、第1種銃猟免許やわな猟免許などを持ち、ニホンザルなどのモニタリング調査や被害対策の立案などを担ってきた。
講演では、対策の基本的な考え方として▽環境管理(集落内の環境管理)▽被害防除対策(追い払いや柵の設置)▽捕獲──の流れで進める重要性を強調。
そのうえで「行政主体ではなく住民主体。自分の畑は自分で守ることが大事で、防犯対策で自分の財産を自分で守るのと一緒。そのやり方について、行政が支援していくことが大切」と語った。
町内では、集落独自で鳥獣害対策組織を立ち上げ、山際に沿って電気柵を張り巡らせるなどした結果、ツキノワグマの農地侵入を抑え、農業被害額がゼロになった事例を解説。「集落が一致団結して取り組めば、2~3年で被害はなくなる」と述べた。
同町をはじめ1市3町1村で構成する会津北部地域鳥獣被害防止広域対策協議会の取り組みも紹介。ツキノワグマを対象とした町境をまたいだ形での追い上げや、ニホンザル群出没の情報共有など広域的な対策実績に触れた。
さらに、広域協議会の各市町村が専門職員を配置している特徴にも言及。行政と住民が信頼関係を築き、鳥獣被害を抱える地域を支援するモデルを構築したとして、猪苗代町が平成27年度の農林水産省鳥獣被害対策優良活動表彰を受けた実績も示した。
飯田氏は「しっかりとした情報を提供し、集落ぐるみで対策を実施して、効果を実感してもらうことで信頼関係が生まれる。そのためには、職員の専門的な知識や技術が必要。最前線で対応する市町村こそ、対策を適正に行うための専門員配置が必要」と結んだ。
気仙3市町でもニホンジカやニホンザルによる被害が深刻化しており、出席者は終始熱心な表情で聴講。講演後は出席者から質問も多く寄せられ、関心の高さをうかがわせた。
研修会ではこのほか、いわて農業農村活性化ビジョンに関する報告や、遊休農地を生かしたソバ栽培などを行ってきた下有住いきいき協議会の活動発表も。また、本年度にいわて農林水産振興協議会表彰事業で「明日を拓く担い手賞(農業部門)」に輝いた細谷知成さん(43)=大船渡市=の功績も紹介された。