救出された貝の今に迫る 震災後初めて一般公開 支援特別展が開幕 陸前高田(別写真あり)

▲ 被災した海と貝のミュージアムから救出された貝の標本約600点を展示

巻き貝の中を断面標本とともに紹介

 

 陸前高田市立博物館(松坂泰盛館長)と、津波により被災した文化財の保存修復技術の構築と専門機関の連携に関するプロジェクト実行委員会(高橋廣至会長)による支援特別展「ずっとずっとふるさと陸前高田─海と貝のミューアジアムから救出された貝たち─」は8日、高田町の市コミュニティホールで開幕した。今回は東日本大震災で被災した同市の「海と貝のミュージアム」から救出された貝の標本約600点を展示。震災後にこれらの標本を一般公開するのは初めてで、来場者らの関心を集めている。12日(水)まで。

 

12日までコミュニティHで

 

 同プロジェクトは平成28年、「ずっとずっとふるさと陸前高田─心に生きる『たからもの』─」として、市立博物館の被災文化財などを展示する企画展を初開催。昨年は、国の登録有形民俗文化財「陸前高田の漁撈用具」にスポットライトを当てた展覧会を開いた。
 第3弾となった今回の〝主人公〟は、海と貝のミュージアムで被災し、安定化処理によってよみがえった貝たち。震災後に救出された貝をまとまった形で一般公開するのは、被災から9年近くを経て初めてとなった。
 同ミュージアムは6年7月、高田町下宿地内で開館し、国内外の貝およそ6万種類、約11万点を所蔵、展示。同16年には、県内第5号の博物館相当施設に指定され、海との関わりを楽しみながら学べる施設として多くの人々に親しまれていた。
 しかし、震災の大津波で海沿いにあった施設は被災し、24年の3月末で閉館。館内で所蔵、展示していた貝たちも大きな被害を受けたが、全国の博物館関係者や研究機関の支援により、約9万6000点が救出された。
 被災した貝たちは、県立博物館や神奈川県の真鶴町立遠藤貝類博物館、大阪府の大阪市立自然史博物館に持ち込まれ、安定化処理などを実施。1個ずつ洗浄、除菌、乾燥の作業を経て、現在は陸前高田市立博物館で保管されている。
 今回はこのうち、328種類、約600点を展示。中でも目を引くのが、ミュージアム開館前にパラオ共和国の第3代エピソン大統領から同市に寄贈されたオオシャコガイの右殻(殻長1㍍28㌢)。左殻は津波で流失したが、世界最大級の大きさを誇る貴重な標本として存在感を示している。
 「変わった形」「貝の成長過程」「貝の色」「貝と人とのかかわり」など、テーマごとに国内外の多彩な貝がズラリ。当時のミュージアムを知る人には、懐かしさも感じられる内容となっている。
 貝類研究の第一人者とされる、小友町出身の鳥羽源藏氏(1872~1946年)と千葉蘭児氏(1909~1993年)が採集した貝の標本も紹介。震災後に市民が発見し、博物館に届けられた貝にも触れている。
 このほか、会場では紙を素材とする資料や写真、漁撈用具などの安定化処理などを解説。現在、高田町内に建設中の新しい市立博物館の模型も展示している。
 同館の熊谷賢主任学芸員(53)は、「貝の標本は津波で流されたと思われがちだが、多くがレスキューされて復活し、博物館に移管されている。市民の方々にも支えられており、こうしたことを今回の展示で伝えたい」と話し、多くの来場を呼びかけている。
 展示時間は、午前9時から午後5時まで。9日午後1時30分からは、同ホールで支援シンポジウム「よみがえる文化財と博物館の復興」が開かれる。
 問い合わせは、市立博物館(℡58・2203)へ。