木造仮設住宅支援に区切り 「ひなも新聞」終了へ 邑サポートが編集・発行 住田

▲ かつて集会所として利用されていた本町仮設団地の一室で、これまで発行した新聞などを眺める奈良代表

 住田町の一般社団法人・邑サポート(奈良朋彦代表)は、町内仮設住宅団地向けの広報紙「ひなも新聞」を次回発行分で最終号とすることを決めた。8年にわたり、団地に寄せられた支援やコミュニティー活動を丁寧にまとめただけでなく、入居者との会話をつなぐ役割も担ってきた。同法人による仮設住宅支援は今春で節目を迎えるが、今後も町内に拠点を置き、地域の福祉や教育環境の充実支援に加え、仮設団地跡地利活用への参画も見据える。

 

町内被災者向け広報紙

入居者〝全卒業〟を前に

 

 町は東日本大震災を受け、発災2カ月後の平成23年5月までに火石(世田米)に13戸、中上(下有住)に63戸、本町(世田米)に17戸の仮設住宅を建設。これまでに被災者約280人が居住した。
 県外出身者4人で構成する邑サポートのメンバーは23年7月以降、木造仮設団地内でのコミュニティーづくりや、地域の復興に向けた支援活動を展開。古里を離れて暮らす被災者や地域住民、支援団体をつなぐ活動を続けてきた。
 各団地での自治会活動本格化を受け「団地の出来事を伝えるかわら版」として、24年1月から「ひなも新聞」を発行。題字は、火石、中上、本町各団地名から1字ずつ取った。
 A3判の紙面構成で、月1回のペースでまとめ、昨年春からは季節ごとに発行。主に、団地に寄せられた支援や自治会活動、入居者の声などを紹介してきた。
 ニュースだけでなく、各団地の通路沿いに並ぶ花苗のプランターを写真で紹介する「軒先ガーデニング」の企画も。自らが暮らす団地内の動きを知るだけでなく、他団地の活動も把握できることから、好評の声が多く寄せられていた。
 入居者が日々減る中でも、料理教室や体操、住民の交流会など、定例行事をこまめに紹介。第1号から編集に携わる奈良代表(45)は「支援や体操のボランティアが今月も来てくれた感謝。そういった変わらないことも、しっかり伝えようと思っていた」と語る。
 発行後は団地内を1戸ずつ歩いて回り、玄関先で新聞を手渡す機会を大切にした。記事にちなんだ会話を通じて、さりげなく生活の様子を把握できた。退去した住民でも、希望があれば再建先に出向き、新聞を届けながら入居時の思い出話に花を咲かせた。
 ピーク時では150部を出していたが、住宅再建に伴い、現在は40部ほどに減少。建物が残る中上、本町団地では自治会がすでに解散し、日常的に寝泊まりする被災者利用が数世帯となった。町は、木造仮設住宅の供用期限を原則来月までとしている。
 今年夏までには入居者の完全退去が見込まれる中、次回発行の89号での終了を決定。近く編集に入り、来月の発行を見据える。
 奈良代表は「住民のみなさんによる自治会も、いずれは解散するものとして立ち上げた。活動収束や、発行の終わりの時期が来ることは覚悟していた」と語る。
 邑サポートとしても、発行終了で活動当初からの仮設住宅支援に区切りを迎える。神奈川県出身の奈良代表らは今後も町内に生活拠点を置くことにしており、「教育や福祉など、地域住民の方々が暮らしやすい環境づくりのサポートをしたい。本町仮設などの利活用策にも積極的にかかわることができれば」と話している。