課題解決へ協働成果発信 包括協定を生かし 津田塾大・住田町連携活動報告会(別写真あり)
令和2年2月15日付 1面
住田町と連携協力に関する包括協定を結ぶ津田塾大学(東京都、髙橋裕子学長)の学生による「津田塾大学・住田町連携活動報告会」は14日、町役場で開かれた。昨年8月に行った町内でのフィールドワークなどを生かし、住田高校生との協働による情報発信、持続可能な医療介護体制、外国人をはじめとした多文化共生と、町が抱える地域課題に向き合った研究成果を発表。これまで町内では見られなかった切り口での活動や、住民に身近な視点での提言などが相次ぎ、訪れた地域住民らの関心を集めた。
津田塾大の学生数は約3200人。大学の学芸学部には英語英文、国際関係、数学、情報科学などの各学科、総合政策学部に総合政策学科がある。
総合政策学科の森川美絵教授らは、平成25年前後から東日本大震災被災地における医療・福祉・介護連携分野の支援をきっかけに、住田とのかかわりを強めてきた。こうしたつながりを地域活性化や大学教育・研究推進につなげようと、一昨年2月に協定を締結した。
協定を生かし、総合政策学部などの学生と森川教授は昨年8月に住田町を訪問。学生たちが関心を寄せる情報発信、医療介護、外国人共生などのテーマに沿って町内各地を回り、関係者と対話。現状に耳を傾けながら、課題や将来像などを尋ねた。
報告会は調査活動やその後の協働成果について発信しようと企画し、学生6人と森川教授が再び住田町を訪問。住田高校生や地域住民ら約20人が出席した。
冒頭、横澤孝副町長は「学生の皆さんには、積極的に町内を回り、調査活動を行っていただいた」とあいさつ。森川教授は「一度来て何かをして終わりということではなく、連携を持続的に発展させるための関わりを」と述べた。
情報発信プロジェクトを展開した学生4人は、住田高校生との協働によるSNSの「Instagram(インスタグラム)」を生かした取り組みを紹介。高校生が撮影した住田の「今」を発信することで「地元を離れた人が住田町を身近に感じる故郷を懐かしむきっかけ」をつくり、Uターン人口の増加を見据えた活動を展開した。
学生たちは「住民主体の情報発信」「地元をよく知る地元居住者(若年層)が、住田の今を発信することでUターンの促進につながる」「高校生との関係を強化し、発信者側の帰属意識の醸成を図りたい」などと発言。実際に情報発信を担う住田高校生もマイクを握り、季節に合った写真を撮る楽しさなどを振り返った。
引き続き、昨年度も住田で調査活動を行った総合政策学部3年の足立百音さんが「持続可能な医療介護体制」を発表。訪問看護に携わるスタッフや、古民家を生かしたデイサービスセンターを運営している介護事業所などでの活動を踏まえ、特定健康診査受診率の向上や地域全体で支え合う医療介護体制の重要性などに触れた。
同じく30年度から訪れている同3年の堀江悠希さんは「外国人との共生」について調査。町内に工場を構える住田フーズで働く技能実習生は約60人で、町内人口の1%を超える。このほかにも研修生を採用している事業所があり、同町は県内でも外国人が占める割合がトップクラスにある。
調査活動ではベトナム出身の技能実習生3人に聞き取りを行い、工場での生活や寮での暮らし、地域とのかかわりなどを把握。共生に向けた課題では「実習生と住民が互いに生活の様子を知らず、助け合いができない」と指摘した。
一方、都市部と比べて生活費が割安で地域活動にかかわりやすいなど、実習生の視点からの住田の良さにも言及。「外国人との共生では、お互いを知るきっかけが重要。実習生は住田町に来た外国人ではなく、産業や地域づくりの担い手の問題」と締めた。
いずれも住民生活に身近で地域課題に直結しているテーマの発表とあって、出席者も終始熱心な表情で聴講。意見交換ではUターン者確保に向けたなりわいの発信や、在住外国人が増加する中での防災体制のあり方などが話題となり、学生たちは来年度以降の研究のヒントも探っていた。