「オール大船渡」で協働を 戸田市長が施政方針演述 市議会3月定例会開会

▲ 3月定例会で施政方針演述を行う戸田市長

 大船渡市議会3月定例会は21日、開会した。現任期では最後の定例会となり、会期を3月19日(木)までの28日間と決め、初日は戸田公明市長が施政方針演述を行った。戸田市長は、東日本大震災からの復興完遂と持続可能なまちづくりに対し、「『オール大船渡』で挑まなければならない」として、市民らとの協働を強化しながら市政運営に取り組む決意を示した。当局は、一般会計に223億円を計上した令和2年度予算案などの議案52件を提出した。

 

 演述で戸田市長は、残り1年余りで市の復興計画期間が満了を迎えるとして、「計画登載事業のほとんどは期間内の完了が見込まれるが、被災された方々に寄り添う施策は期限にとらわれず、今後とも丁寧に取り組んでいく」と、復興の締めくくりに向けた検証や課題抽出、復興記録誌作成等の実施に意欲を見せた。
 そのうえで、「『復興の総仕上げ』を強く意識し、『人口の減少・高齢化に対応し得る地域力の向上』と、『地域産業の活性化による市民所得の向上』を目指さなければならない」と述べ、市の将来像「ともに創る 三陸の地に輝き躍動するまち 大船渡」の実現に向け、総合計画に掲げる七つの大綱に沿って新年度の主要施策を説明した。
 「豊かな市民生活を実現する産業の振興」では、国際リニアコライダー(ILC)の誘致・実現に向けた着実な施策展開に注力。起業の促進と空き店舗の有効活用、商店街の活性化、新産業の創出、(仮称)甫嶺復興交流推進センターを通じた体験型交流の促進も図る。
 水産業は、資源の適切な管理や漁業所得の向上、漁業担い手の育成・確保に向けた施策を実施。磯焼け対策などへの支援、新たな養殖対象種導入にかかる調査・検討、水産基盤施設の整備なども進めていく。
 農業では、農地の効率的な利用や担い手の育成・確保、市花・ツバキの利活用、鳥獣被害対策などを計画。林業では造林・間伐、地域材の利用促進、森林環境譲与税を活用した私有林の管理などに取り組む。
 商業は、大船渡駅周辺地区における魅力とにぎわいのあるまちづくりの具現化、被災施設の復旧を目指す事業者への支援、企業誘致、産学官連携などを強化。観光は、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会と連動した取り組み、広域連携による受け入れ体制の整備、外国人観光客の取り込み、海上七夕船「大船渡丸」の改修などを行う。
 「安心が確保されたまちづくりの推進」では、被災者支援、結婚から妊娠・出産、子育て期までの切れ目のない支援、健康教育、各種検診などの受診促進、地域医療の確保、障害者福祉、地域包括ケアシステム構築への取り組みなどを展開する。
 「豊かな心を育む人づくりの推進」においては、小中学校の規模と配置の適正化を継続して進め、第一中の校舎等改築にかかる実施設計に着手。スポーツの振興と交流・関係人口の拡大、「復興『ありがとう』ホストタウン」事業などにも力を入れる。
 「潤いに満ちた快適な都市環境の創造」に関しては、被災跡地の土地利用、災害公営住宅への支援、空き家対策などを推進。港勢拡大に向けたポートセールス、国や県に対する重要路線の改良整備に向けた要望、効率的な交通体系の構築、上水道と簡易水道の安定供給、立地適正化計画の策定に関する取り組みも図る。
 「やすらぎある安全なまちづくりの推進」では、豪雨災害対策、多重防災型の地震・津波対策、(仮称)防災学習センターの整備などを実施。「自然豊かな環境の保全と創造」においては、温暖化対策、大船渡湾域の環境対策、適正な汚水処理、ごみの適正処理などを進める。
 「自立した行政経営の確立」については、次期総合計画の策定に向けた取り組みを展開。国土強靱化地域計画の策定、地区との協働の推進、市政情報の積極的な発信、持続可能な行政執行体制の構築に向けた組織機構再編、業務改革、広域連携・交流の強化も進めていく。
 最後に、「復興完遂までの道のりと並行するのが、大船渡を持続可能なものとするためのまちづくり。復興を果たし、新時代の基盤となる大船渡を形づくるのが、今を生きるわれわれの大きな責務」と述べ、「この重責は、すべての大船渡市民で担うものであり、立ちはだかる諸課題にも『オール大船渡』で挑まなければならない」と強調。
 「『オール大船渡』のパワーを培い、発揮するうえで不可欠な多くの皆さまとの協働を強化しつつ、市民の負託に応えるよう、誠心誠意、不退転の決意をもって市政運営に臨む」と力を込めた。
 続いて、小松伸也教育長が所信表明。「復興を支え、確かな未来を築く人づくり」を目指し、市教育大綱に掲げる重点的な取り組み方針を基本として、▽生涯学習の推進▽学校教育の充実▽青少年健全育成の推進▽スポーツ・レクリエーションの振興▽地域の歴史・文化資源の継承──の各施策を進めていくとした。 
 このほか、市当局が▽綾里浄水場マンガン除去施設整備工事の請負変更規約の締結▽歯科用医療器具の誤飲事故にかかる損害賠償事件──の専決処分を報告。2年度各種会計予算案など提出議案を説明した。
 専決処分の損害賠償事件は昨年7月、市国民健康保険歯科診療所で職員が歯科診療中、患者に研磨用バー(長さ2㌢、直径2㍉、金属製)を誤飲させたもの。原因は、職員による医療器具使用時の安全確認が不十分だったためで、相手方に賠償金11万4263円を支払った。
 研磨用バーは後日、自然排出が確認され、患者の体調に異常はないという。市は、これまで非公表としていた理由を「患者の家族の意向を考慮した」としている。
 請願「日本政府が『核兵器禁止条約』に署名、批准することを求める」(原水爆禁止大船渡市協議会等提出)は、総務常任委員会に付託。定例会は休会明けの27日(木)、本会議で本年度一般会計等の補正予算案などを審議する。