滝観洞のあり方検討へ 新年度予算案に事業費 老朽化進む観光センターなど 住田町

▲ 昭和47年に開業した滝観洞観光センター。多彩な利用に対応してきたが老朽化が進む

 住田町は、新年度の一般会計予算案に上有住の滝観洞再開発に関する事業費を計上する。滝観洞の中核施設で、かつては宴会や宿泊も受け入れていた滝観洞観光センターは、築後48年が経過し、老朽化への対応が急務。利便性確保に加え、持続可能な運営を見据えた効率的な施設配置や、近隣に釜石花巻道路のインターチェンジがある気仙北端の〝玄関口〟としてのあり方など、町デザイン会議をはじめ地元内外の有識者を交えた議論の行方が注目される。

 

デザイン会議で協議

 

 国内屈指の鍾乳洞として知られる滝観洞は、住田観光開発㈱が管理している。長らく交通の難所とされてきたが、平成20年に釜石花巻道路の「滝観洞インターチェンジ(IC)」が供用開始。昨年3月には釜石花巻道路が全線開通し、三陸沿岸道路にも接続したことで個人客が増え、本年度は9年ぶりに入洞者が1万人を超えた。
 滝観洞では最奥部にある「天の岩戸の滝」までの通路に加え、町所有の観光センターが構える。さらに、名物の「滝流しそば」を提供する食堂やトイレ、入洞受付などの各施設が整備されている。
 このうち、観光センターは昭和47年に開業。施設は鉄筋コンクリートの3階構造。かつては近隣で鉱山が操業しており、「山の神」の催事に伴う宴会が盛んに行われたほか、新日鉄釜石関係者らによる団体利用や結婚披露宴もあった。
 20年ほど前までは、宿泊にも対応。平成23年の東日本大震災直後は、復旧事業を担う建設関係の作業員らが滞在した。近年は、食堂と1階部分の休憩所のみの利用が続いていた。
 古き良き昭和のたたずまいが残る一方、完成から50年近くが経過し、老朽化が顕著に。食堂がある2階に続く階段が急勾配といった不便さも指摘されるほか、耐震性にも不安を抱える。トイレなどに接続する浄化槽が更新時期を迎えているという。
 また、各建物がそれぞれ独立していることから、施設従業員の効率的な運営確保も課題に。インターチェンジからトイレ休憩で立ち寄る姿も目立ち〝道の駅〟としての機能充実にも期待が高まっているほか、徒歩圏内にあるJR釜石線・上有住駅には春から秋にかけての毎週末にSL銀河が停車し、にぎわいを見せる。
 新たな整備には財政負担が伴う中、新年度は利便性確保と効率性の両面から検討に入る見込み。町や施設を管理する住田観光開発との調整に加え、担当課の枠を超えて協議を行う町デザイン会議でも取り上げる。
 デザイン会議は建築・建設分野のハード事業について、有識者のアドバイスも交えて総合的な観点で検討していこうと、平成29年度に設置。これまで消防分署や昭和橋周辺、新上有住地区公民館などについて議論を交わしてきた。
 神田謙一町長は「老朽化が進む施設に関しては、そのままの規模がいいのかの必要性も含めて、見定めないといけない。道路整備によって来訪者は増加傾向にあるが、長期的な見通しも必要。トータルの部分で、あり方を検討したい」と話している。
 予算案に計上している滝観洞再開発事業費は296万円。これとは別に、洞内の安全対策にも着手。新たに地域おこし協力隊も採用し、観光ガイドの育成を図ることにしている。予算案は、25日開会の町議会定例会に提案される。