「当面 1町1校体制に」 小学校適正規模化 一般質問で教育長答弁 陸前高田市議会

 陸前高田市議会定例会は25日、一般質問が始まった。鵜浦昌也(創生会)、及川修一(無会派)、中野貴徳(同)、木村聡(とうほく未来創生)、菅野広紀(碧い風)の5議員が登壇。小中学校適正規模化の議論で、大久保裕明教育長は小学校について「当面、1町1校体制を維持していく」とする一方、今後の状況や地域からの要望いかんでは方針転換も考えられるとの見解を示した。

 

 小中学校のあり方、小規模校の教育について質問したのは中野議員と木村議員。市は平成23年度に小中学校の適正規模化実施計画の一部見直しを図り、「小学校は1町1小学校、中学校は市内東西の2校体制」としている。
 しかし、小学校では現状、矢作、気仙、横田など1学年が10人を切る学校もあり、中野議員は現在の市教委の考えをただした。これに対し大久保教育長は、「当面は1町1校体制は維持していきたい」としたうえで、「計画の一部見直しを図った時点から時間が経過し、また状況が変化している」と述べ、保護者や地域の要望を参考にしながら、今後の体制については検討していくという考えを示した。
 同議員は「統廃合すべきという意見も聞かれるが、なかなか地域だけで話を進めていくのは難しい。市の出生数や未就学児の数など、地域が考えるための材料を市から提供する考えは」と見解を求め、千葉賢一学校教育課長は「次年度以降、学校を回る際に統廃合について地域から意見が出ているかどうか状況の把握もしていきたい」と述べた。
 一方、木村議員は「子どもが減っているから学校統合、と単純に結び付けるのではなく、議論の際には小規模校のメリットも十分に伝え、住民に理解してもらうことが重要」と指摘。大久保教育長は「統合で規模が大きくなれば、学習や部活動など多人数での活動が可能になるが、その分、地域とともにする経験が減ることや通学距離が長くなることによる負担なども増える。メリット・デメリットを踏まえながら、各学校の教育計画についても進めていきたい」とした。
 鵜浦議員は、市の推進するピーカンナッツ事業について「まだ具体的な形が見えてこない」とし、今後の見通しについて質問。戸羽太市長は「ご理解いただきたいのは、復興・創生期間内で何かしようという事業ではないこと。日本で初めての挑戦ゆえに難航しているのは確かで、時間はかかるが、チャレンジしていこうとしている」と述べ、理解を求めた。
 また、阿部勝地域振興部長は米崎町に整備される育苗ハウスについて「ほかの事業の資材との兼ね合いで3月の整備予定が若干遅れているが、その間、東京大学の施設を利用して苗木を育てるといった代替案の話も進んでいる」と説明した。
 菅野議員もピーカンナッツの苗木栽培を巡り、「陸前高田で実がなるのはまだ先のようだが、どんな形で産業振興を図っていく考えか」と質問。阿部部長は「ゴルフ場が使われなくなったあとの土地の利活用策として植えるなど、全国的に苗木を販売できる可能性がある」と述べ、当面は、輸入したナッツを使った土産品開発などを行っていくとした。
 また、同議員は本年度始まり、市内11の地区コミュニティ推進協議会単位で交付される地域交付金制度について「市道側溝の工事や発電機の整備などにも使われているようだが、道路整備や防災備品の購入等は地域と話し合い、市が行うべきでは。交付金制度を、もっと地域独自の悩みに対応するためのものにしてはどうか」と市の考えを尋ねた。
 戸羽市長は「市道整備などは細かい要望が非常に多く、すぐ手をつけられない場合もあることから、『どうしても急いでいる』というときにこの交付金を活用してもらっている。すべてを地域でやってくれということではないが、限られた財源でご要望に応えていくためには、あまり線引きしすぎないほうがいい」と答弁した。
 また、これについて中村吉雄防災課長は、「指定避難所には発電機や最低限の食料などを配備している。自主防災組織からの備品、備蓄の要望についてはさまざまな助成制度もあり、ご活用いただくよう積極的に周知している」とした。
 交付金制度については木村議員も、地域での話し合い等における若年層の参加率が低い現状を踏まえたうえで、「(地域に交付される)500万円のうち100万円は40歳以下の住民が考えた用途に限るなど、若い人が自分にできることを考える機会をつくれるような制度設計にしては」と提言。
 これに対し、戸羽市長は「地域に使ってもらいやすいよう、できるだけ自由な制度設計が大事」と繰り返しながら、「コミュニティーの維持という意味では若い人に参画してもらうというのは大事な考え方。内部でも検討してみたい」と述べた。
 また、同議員は同性カップルに対し、婚姻と同等と承認したうえで自治体独自の証明書を発行する「パートナーシップ制度」について、同市での導入可能性を質問。齋藤晴美福祉部長は「共生社会づくりを目指す本市としても重要なこと。先行する自治体の例を勉強していきたい」と前向きな考えを示した。
 市長も「LGBTの問題に取り組んでいく姿勢を内外に示すことや、性的マイノリティーの方にこのまちで暮らしていただく選択肢をご提示するうえでも、ぜひ実現したい。一方で、当事者が本当に望む形で制度設計しなければならない。慎重な調査と検討が必要」と述べた。
 及川議員は、市が高田町の東日本大震災追悼施設内に来年度の設置を予定する犠牲者刻銘板について「整備状況や市民の反応は」と質問。戸羽市長は、遺族のうちおよそ9割にあたる1599人から回答を得ているとし、「うち76人が『刻銘を望まない』と答えており、複雑な思いを持たれていると感じている。遺族のご意向を確認しながら整備を進めたい」とした。 
 同議員は市内の公共施設等の活用策に関し、「本市では青年会議所がスポーツ合宿誘致を積極的に進めた経緯がある。その当時のように合宿誘致のパンフレットを作成するといった考えはあるか」と尋ね、市長は「まさに青年会議所に呼びかけているところ」と答弁。「市としても、市内の宿泊施設に一定期間宿泊した団体等に対し施設利用料を免除するといった施策を打っている。お願いするところは外部にお願いしながら、こういう施策を拡充していきたい」と述べた。