漁業者らの控訴棄却 サケ刺し網漁認めず 仙台高裁が一審判決支持
令和2年2月27日付 7面

サケの固定式刺し網漁を許可しないのは不当だとして、気仙の漁業者を含む県漁民組合(藏德平組合長)の組合員90人が、県に対して不許可処分の取り消しなどを求めた「浜の一揆」訴訟の控訴審判決で、仙台高裁(山本剛史裁判長)は25日、原告の請求を退けた一審判決を支持し、漁業者側の訴えを棄却した。原告側では今後、上告についても検討する。
小型漁船で操業し、東日本大震災で被災した漁業者で構成する同組合の組合員ら原告側は、震災からの復興や後継者育成のため、「漁協や浜の有力者の経営による定置網にサケ漁を独占させるべきではない」と平成27年11月に盛岡地裁に提訴。1人年間10㌧を上限としてサケの固定式刺し網漁を許可するよう求め、法廷で争った。
一審判決で、盛岡地裁は「固定式刺し網漁業はその参入障壁の低さ、漁獲効率の良さ、採捕したサケを人工ふ化放流に必要な親魚として使用しがたいことなどから、これによるサケの採捕は人工ふ化放流事業の実施を困難にする恐れがある」などと指摘し、原告の訴えを棄却。
控訴審では、原告側は「固定式刺し網漁業と県の人工ふ化放流事業とは相いれないものではない」「漁業を魅力ある産業とし後継者不足を解消するためには、漁業効率の高い漁業こそ許可すべき。また、効率の高い漁業を解禁しても、サケ資源の確保に悪影響を与えるものではない」などと主張してきた。
判決で山本裁判長は「サケの漁獲量も減少傾向にあり、これが近いうちに回復する具体的な見通しもない状況において、岩手県知事が固定式刺し網漁業を制限することには合理的根拠がある」などとして原告の訴えを退けた。
判決後に開かれた報告集会では、藏組合長(83)が「担い手を残し、努力すれば生活できるんだということを示すために戦ってきた。5年かけてこの判決とは。裁判所は何も分かっていなかったのではないか」と不満をあらわにした。
今後の対応については協議して決めるとしていたが、原告側からは「手応えは感じていたがこの判決とは」「訴えるべきことは訴えていくべきだ」といった声も上がっており、最高裁への上告も検討していく。
固定式刺し網でのサケ漁獲をめぐっては平成2年、網にかかるサケの混獲を認めるように求め、当時の気仙地区固定式底刺網組合が一斉操業を強行。県に混獲したサケの処分方法を求めて実力行使に打って出たという背景もある。
この一斉操業にも参加した瀧澤英喜さん(63)=大船渡市三陸町越喜来=も原告団のメンバーで、判決について「残念の一言。最高裁まで行く意思はある」と語った。
今回の判決を受け、県では「県の不許可処分の妥当性が認められたものと考えている。控訴人の漁業者においては、サケ資源の重要性や現状についてご理解いただければ。県としては今後も、本県漁業の振興を図るために適切に制度の運用を進めていきたい」としている。