公共施設 全面休館へ 新型ウイルス対応で 陸前高田市があすから

▲ 陸前高田市では2日から公共施設を休館するのに伴い、関係者が対応に追われた

住田は3日から一部

 新型コロナウイルスの感染拡大防止策として、陸前高田市は市内の公共施設を2日(月)からほぼ全面的に、住田町は3日(火)から一部の公共施設を休館する。こうした措置に伴う地域経済への影響はもとより、2月29日に宮城県仙台市で東北地方初となる感染者が確認されたことを受け、今後は気仙3市町でも重ねての対応が求められそうだ。

 

仙台で初の感染者も

 

 陸前高田市では2日から、市立図書館、総合交流センター・夢アリーナたかたおよびB&G海洋センター、スポーツドーム、まちなか広場交流施設・ほんまるの家、黒崎仙峡温泉、気仙大工左官伝承館、杉の家はこね、玉乃湯、二又復興交流センター、おいで炭の家──を当面休館とする決定を下し、厳戒態勢をとる。
 高田町の市コミュニティホールを含め、各地区コミュニティセンターは開館するが、市が主催するイベントはすべて中止・延期。民間による催しについては「主催者の判断にゆだねる」としているが、その多くが同様に中止または延期の方針を固めている。
 東日本大震災から丸9年となる11日(水)が近づく中、震災関連行事への影響も出ている。同市は夢アリーナたかたで開催する追悼式典について「市内の遺族を中心に開催する」とし、外部からの来賓を招かないことを決めた。これにより、来賓は170人から70人ほどに減るといい、献花などにかかる時間が短くなることで式典全体の短縮化が図られる。
 また、これまでは会場の受付で市職員が式次第などを遺族らに手渡ししていたが、濃厚接触を避けるためこれを取りやめることとした。参列者にもマスクの着用、手指の消毒などを呼びかける。
 公共施設の全面的な閉鎖といった厳しい対応は、現時点で罹患者の出ていない都道府県の自治体としては珍しく、同市独自の異例的措置となる。戸羽太市長は「県内で発症が確認されていない中、そこまでするのかという意見も当然あるが、感染者が出てしまってからでは遅い」と語る。
 交流人口、関係人口の拡大を推進し、外部の人とのつながりを自治体の〝命綱〟と明言する同市だが、戸羽市長は「皆さんに『来てください』というからには、対応が後手に回るわけにはいかない。東日本大震災で県内最大の被害を受けた本市の危機管理能力が改めて問われる場面であり、市民や来訪者に万が一のことがあれば、それは震災被災地全体のイメージダウンにもつながる」と対応への理解を求める。
 休館する施設のうち、箱根振興会(藤原直美会長)が運営する気仙大工左官伝承館は例年、12月~2月の冬季は来訪者数が4桁から3桁に減少する「閑散期」。しかし、庭に東日本大震災追悼モニュメント「3・11希望の灯り」が設置されていることから、3月には毎年2000人弱が来館し忙しくなる。
 同館職員の及川定子さんは、「休館で経営的にかなり厳しくなることは確かだが、人が多く訪れる時期だからこそ、感染リスクも高まる。市の決断はありがたい」という。
 戸羽市長は「経済を優先し、人命がおろそかになってはいけない」とする一方、休館中の売り上げがなくなってしまう施設について、「当然、市として赤字分のフォローなどを考えていかねばならない」と述べ、「経済活動への影響については、事業者などからもしっかり聞き取りしながら対応していく」としている。
 一方、住田町教育委員会は、3日から小中学校の休校といった措置をとるのに合わせ、社会体育施設、学校体育館および地区公民館体育館も休館すると決めた。中央公民館図書室、地区公民館は開館するが、児童・生徒の利用は禁止する。
 こうした中、29日には仙台市が「新型コロナウイルスの感染者が、市内で1人確認された」と発表。東北地方では初めての発生となった。
 これを受け、地域住民からは「津波伝承館や道の駅・高田松原は閉鎖しないようだが、あそこが県外から一番お客さんが来る場所」という不安の声、「近隣自治体も対応をそろえるべきでは」といった指摘も聞かれる。
 国内で事態の収束が見られない場合、各市町には今後さらなる決断が迫られる。