ホタテ養殖のおもりにワイン 海中貯蔵を観光素材に 生産者ら連携し小石浜で取り組み始動 大船渡(別写真あり)

▲ 「恋し浜ホタテ」の養殖漁場を活用したワイン海中貯蔵の試みを始めた佐々木さん㊥とイザベルさん㊨。1日は吉野さん㊧も駆けつけて作業を手伝った

 「恋し浜ホタテ」で知られる大船渡市三陸町綾里の小石浜地区で1日、ホタテ養殖施設を活用したワイン海中貯蔵の試みが始まった。「地域資源を生かした観光振興の新たな素材に」との狙いで、ホタテ養殖の耳づりロープのおもり代わりに海外や地元産のワインを用い、体験観光の参加者にホタテと一緒に味わってもらおうと、生産者らが連携。今夏の催しに合わせて引き上げる見込みで、関係者は成果を楽しみにしている。
 この取り組みの中心となっているのは、県認定指導漁業士で恋し浜ホタテの養殖を手掛け、その発信にも力を尽くしている佐々木淳さん(49)。ホタテ養殖漁場見学や試食を盛り込んだ「ピクニッククルーズ」も実施している。
 数年前から酒類の海中貯蔵を試みており、今回はワインの本場フランス出身で、昨年から同市の地域おこし協力隊員を務めるプロヴォ・イザベルさん(40)と協力。「恋し浜マリアージュ」と銘打ったホタテとワインを楽しむ企画を今夏に実施する計画を練っており、「大船渡の産品や自然を生かした新たな産業として、可能性を広げていきたい」と意欲を見せる。
 今回の海中貯蔵は、漁港から1㌔ほど離れた養殖漁場で、ホタテの耳づりロープのおもり代わりにワイン数本を入れた稚貝養生用ネットを取り付けるというもの。
 ホタテに合うワインをイザベルさんが選定。フランス産のほか、同市のワイン製造販売㈱スリーピークス(及川武宏代表取締役)の製品も取り入れた。
 作業は1日に実施。イザベルさんのほか、漁業者らと消費者をつなぐ情報誌「東北食べる通信」の取り組みなどを通じて佐々木さんと親交がある、釜石市のNPO法人・アラマキ副代表の吉野和也さん(39)も駆けつけて手伝った。
 ワインはフランス産とスリーピークスが今シーズン仕込んだものを合わせて32本を用意。佐々木さんと吉野さんが水温6度の海に潜って取り付けた。夏に予定する引き上げまでの間、水深20㍍ほどで波に揺られ続ける。
 イザベルさんによると、フランスではワインなどの保管のために地下貯蔵庫を設ける家庭も多いといい、「小石浜の海も貯蔵に合った環境だと思う。どのような味になるか今から楽しみ。引き上げの時は興奮するはず」と声を弾ませていた。
 イザベルさんは大学時代に留学で初来日し、卒業後は東京都内の企業に勤務。東日本大震災後、復興支援活動に参加したことで「大船渡愛」を深めた。現在は同市に住みながら、地域おこし隊員として地域資源利活用分野を担当。オリンピックでの訪日外国人増も見込まれる中、「三陸町では三陸鉄道を降りたあとの楽しみが大事。個人向けの観光を開発したい」と、今回の取り組みもヒントとする考えだ。
 また、一昨年に市の中心市街地に醸造所を開いたスリーピークスのワインが海中貯蔵されるのは今回が初めてといい、及川代表(40)は「どういう変化が起きるのか楽しみにしている。三陸の海で寝かせたというストーリーも楽しんでもらえるのではないか。食材やアクティビティなど、いろいろなものや人と連携していきたい」と話している。