古里の復興後押ししたい 市街地にカフェ開業 甲府からUターンの戸羽夫妻 陸前高田(別写真あり)

▲ 花カフェをオープンさせる(左から)戸羽夫妻と水野さん

 生まれ育った陸前高田のにぎわいを戻したい──。山梨県甲府市から古里の気仙にUターンした戸羽斉さん(67)・紀美子さん(67)夫妻が4日、陸前高田市高田町の中心市街地でカフェをオープンさせる。戻ってくるきっかけとなった「あの日」から間もなく9年。白色を基調とした居心地のいい店で、市民らに心和むひとときを提供しようと奮起する。

 

きょうオープン

 

 カフェの建設地は「まちなか広場」そばのかさ上げ地で、紀美子さんの妹の水野真紀子さん(63)=宮城県仙台市=と共同経営する。オープン前日の3日、紀美子さんは「ようやくスタート。ドキドキです」と笑顔で話した。
 紀美子さんは高田町、斉さんは大船渡市大船渡町出身で、大船渡中時代の同級生。結婚後、斉さんの転勤で昭和58年に引っ越して以来、甲府市で生活してきた。
 紀美子さんは、高田町に住む両親に会いに月に1度のペースで帰省。斉さんは広大な大船渡湾を見るたびに「古里に帰ってきた」と癒やされ、気仙は心のよりどころだった。そんな中、震災が起き、慣れ親しんだ景色は一変した。
 その日も紀美子さんは、陸前高田市内にいた。父の入院先の病院を訪ねた時、病室で経験したことのない揺れに襲われ、「ただ事ではない」とすぐに実家に戻った。80歳を超える母の手を引き、高台へ避難。押し寄せる津波は建物の陰に隠れて見えなかったが、なぎ倒された家々から立ち上がる粉じんが空を黄土色に染め、恐怖を実感した。
 一方、山梨にいた斉さんは、紀美子さんに電話をかけ続けたが、一切連絡を取ることができず、安否を確認できるまで「どうしよう…」と慌てた。紀美子さんは高田第一中に開設された避難所で一晩過ごしたあと、小友町にある母親の実家に避難していた。
 その後、近所の知り合いや親せきが津波で亡くなったことを知り、そのたびに心を痛めてきた。被災地は復興へと立ち上がっているものの時間を要す。「何か力になれないか」と紀美子さんは考えるようになった。
 現役を退け、第二の人生を考える時期とも重なり、陸前高田でのカフェ開業を決意。周囲から反対され悩んだが、「これまでずっと付いてきてもらった。今度は自分が応援する番」という斉さんの思いが紀美子さんの背中を押した。
 かつて紀美子さんの母が開いていた生け花教室にちなみ、店名は「花カフェ」と決めた。石窯を使った本格ピザ3種類を看板メニューとし、カウンター4席、テーブル8卓を置く。
 斉さんは「地元に受け入れてもらえるような店となるよう頑張る」と決意。紀美子さんは「おいしいピザとゆったりとした時間を提供し、住民の心を和ませたい」と意気込む。
 営業時間は午前11時~午後11時で、月曜定休。電話番号は47・5670。