読書環境と〝心〟支え 集会所の図書室終了へ 震災後に開設、集いの場に 陸前高田(別写真あり)

▲ 東日本大震災後に整備されたコミュニティー図書室が15日に閉室する

 東日本大震災後、陸前高田市小友町のモビリア仮設住宅北集会所に開設された「陸前高田コミュニティー図書室」が、15日(日)で閉室することになった。仮設住宅の住民をはじめ、文字通り地域住民らの〝コミュニティーの場〟としてあり続けた施設が、仮設住宅団地の集約化に伴い、惜しまれながらその役割を終える。運営関係者らは「これも一つの復興の進展」といい、開設に携わった人や支援者、これまでの利用者らに深く感謝する。

 

モビリア仮設の集約化で

15日に閉室

 

 同図書室は、大震災で全壊した市立図書館を補う形で平成24年4月、公益社団法人シャンティ国際ボランティア会(若林恭英会長)が開設。気仙地区内で最大9カ所の仮設住宅団地をめぐる「移動図書館車」を運営してきた同法人が「立ち寄り・お茶飲み・おたのしみ」を合言葉とし、住民に読書環境と集う場を提供してきた。
 シャンティによる運営は29年7月に終了したが、モビリア仮設住宅団地を中心に広田半島のコミュニティー支援などを展開する同市のNPO法人陸前たがだ八起プロジェクトが8月から事業を引き継いだ。
 運営主体が変わってからも、同図書室は人々の和と輪をつむぐという変わらぬ役割を果たし、1カ月あたり150〜200人程度が利用。図書を借りる人だけでなく、集会所でのお茶っこ会や体操の会、健康マージャンの集いをはじめ、仮設住宅を〝卒業〟した人同士が集まったり、小さい子どもを持つ女性らが子育て情報を交換するなど、幅広い世代に利用された。
 モビリア仮設住宅団地は市の仮設住宅撤去・集約化に伴い、本年度で利用を終了。集会所も取り壊しとなる。現在、同団地に入居するのは6世帯だが、いずれも次のステップへ移ることが決まっているという。
 「最後の一人の入居者まで」という思いから支援を行ってきた八起プロジェクトも、これを機に活動を中止。約9年間の活動に幕を閉じるとしている。
 同図書室の〝常連〟だった広田町の村上紀子さん(55)は、シャンティ時代も今も「とにかくスタッフの人たちのおかげで雰囲気がいい。普通、図書館というと静かにしてなければいけないけれど、ここではみんな明るく、居心地がよかった」と振り返る。
 そのうえで「しばらく顔を見ていない人がいると心配だったり、ここへ来る人たちはみんな家族みたいな存在」と、集いの場がなくなることを惜しんだ。
 同法人は「仮設の撤去に伴う閉室は、それだけ復興が前進した証しでもある。これを喜び、これまでお世話になった皆さんに心から感謝を伝えたい」としている。 
 同室は15日まで午前10時〜午後4時にオープン。9日(月)は午前10時〜午後1時、10日(火)は午後1時〜4時と開設時間が異なるので注意を。7日(土)と11日(水)は休室となる。