住民理解に基づいて判断を 事業者に対して当局 吉浜の太陽光発電所問題で 大船渡市議会一般質問

▲ 一般質問2日目には5議員が登壇

 大船渡市議会3月定例会は5日、前日に引き続いて通告に基づく一般質問を行った。東堅市、今野善信、三浦隆(新政同友会)、奥山行正、渕上清(光政会)の5議員が登壇。三陸町吉浜の荒金山、大窪山に民間事業所が太陽光発電所の建設を計画している件に関し、事業者側に市有地を貸し付ける立場にある市当局は「住民の十分な理解に基づき、事業者側が事業実施の可否を判断することが大切」との見解を示した。

 この問題を取り上げたのは、三浦議員。昨年12月に地元住民らから提出された建設反対署名について、「署名の重みはもちろん尊重されるべきだが、その正当性も検証する必要がある」として質問した。
 この中では、署名の趣意書に記された「市が自然電力に出した山林の賃貸証明書には『第三者に損害を与えた場合の補償は自然電力において行い、当市は一切の責任を負わない』となっています。こんな無責任な建設を許すわけにはいきません」などの文言に触れ、「常識的に考えれば、行政が市民の財産である土地を貸し付けて生じた問題に対し、責任を一切負わないことがあり得るのか」と疑問を呈し、「事実誤認があったとすれば、この件に対する行政側のかかわりに問題はなかったか」と追及した。
 新沼徹企画政策部長は「この反対署名文書においては、市が市有地の賃貸借に応じる用意があることを表明するために出した土地賃貸証明書の中から、当該証明書そのものによって第三者に損害を与えた場合に限定される『市が一切の責任を負わない』という一文をもって、市がすべての責任を回避しているようにとらえられかねない表現があり、地区住民に情報が正確に伝わっていないのではと危惧したところ」と説明。
 「その後に提出した『県から林地開発が許可され、事業に対する住民の理解が得られた場合に有効になる』という停止条件を付した事業予定地の一部にかかる土地賃貸借契約書には、発電所建設工事や発電事業が適切に行われているかを市が調査し、契約に違反している場合には解除できる旨を規定するなど、『市が事業実施に責任を負う』としている」とし、「市としては、住民の十分な理解に基づいて事業者側が事業実施の可否を判断することが大切と考える」と述べた。
 県が示した盛川水系洪水浸水想定区域について、今後の防災対策の取り組みなどを尋ねたのは、渕上議員。
 戸田公明市長は「洪水にかかるハザードマップの作成や、防災訓練の実施などの取り組みを進めていく必要がある」として、「ハザードマップには洪水浸水想定区域に加え、土砂災害警戒区域等も記載し、自分の住んでいる場所での危険度、避難所や逃げるルートなどが把握できる内容を盛り込むことを検討している。作成に当たっては、各地区単位でワークショップを開催し、地域の方々と話し合いながら進めていく」と回答した。
 今野議員は、水道未普及地域の現状や対応に関し、市当局の考えを聞いた。
 千葉洋一水道事業所長は「市内には地形的、技術的な理由で施設整備が行われていない地域があり、こうした世帯では沢水や井戸水等により、飲用水を確保している実態があると認識している。沢水や井戸水等は、渇水対策、水質管理などにおいて、飲用には課題がある」と答えた。
 再質問で同議員は、水道未普及地域での住民の施設整備に対する支援を求めた。千葉所長は「支援はかなり必要ではないかと思っている。実態の把握とともに、他市等の制度などをいろいろ検討し、前向きに進めていきたい」と述べた。
 奥山議員は定例会初日に行われた市長演述の主要施策を取り上げ、「三陸町との合併から20年近くになるが、三陸支所、綾里、吉浜各地域振興出張所の位置付けをどのように検討してきたか」と質問。
 田中聖一総務部長は「平成13年の合併時に締結した合併協定書において、三陸支所は三陸町役場を支所として住民サービスの低下をきたさないよう配慮すると、綾里、吉浜の各地域振興出張所は現状を維持するとされたことから、これまで存続してきた」とし、「三陸支所は管理部門の統合を図りながら段階的に合理化を進め、震災後は支所長以下4人体制となっている。綾里、吉浜の地域振興出張所は合併時から正規職員2人を配置してきた。住民に身近な行政サービスを提供するための一定の役割を果たしている」と述べた。
 同議員は再質問で、改めて三陸町の職員配置をただした。江刺雄輝総務課長は「出張所は診療所の事務なども担っており、ただちに廃止は困難。市内行政サービスの平準化も配慮しながら、現在の仕組みを検証していきたい」と答えた。
 東議員は、『高齢者福祉計画・第7期介護保険事業計画』における施設整備の現状を質問。
 戸田市長はデイサービスの整備計画について、「30年度に5人、令和2年度に70人の合計75人の定員増加を計画したが、介護事業所には施設運営に当たる人材の確保などを考慮して整備の動きがなく、現在のところ目標達成の見通しは立っていない」と説明。
 「特別養護老人ホームの入所待機者は、平成31年4月1日現在で67人、このうち早期に入所が必要なのは34人。入所待機者の解消を図るため、入所施設のショートステイ等の活用、在宅介護サービスの充実に取り組んでおり、今後も推進する必要がある」とした。