新たな漁業の定着目指す 特別採捕のマイワシ 2月末現在で4820㌧ 大船渡

▲ 本州で初めての試みとなったマイワシの特別採捕

 大船渡市魚市場への特別採捕分のマイワシの水揚げ実績(2月末現在)がまとまり、数量は4820㌧、金額は3億4111万円となった。特別採捕は本年度、本州では本県で初めて実施されたもの。5㌧以上20㌧未満の漁船による特定漁法でのマイワシ漁獲が県知事から許可され、試験的に操業している。近年続くサンマやスルメイカなど漁船漁業の主力となる魚種の不漁を受けてのもので、関係者は新たな漁業として定着を目指している。

 

サンマなどの不漁受け実施
本州初の試み

 

 特別採捕は、試験・研究を目的とする場合に特別に県知事が許可するもの。昨年3月、気仙地区の漁船漁業者有志から県沿岸漁船漁業組合に対してマイワシ漁獲に対する請願書が提出され、組合がこれを受けて県や県漁連に働きかけた結果、特別採捕が許可実現に至った。
 本県ではアワビの資源状況調査などで特別採捕が許可された例があるが、マイワシを対象として特別採捕許可が出たのは初めて。北海道ではすでに実施されており、本州では岩手県が初となった。
 これまで本県で水揚げされていたマイワシは、定置網や巻き網船で漁獲されたもの。
 特別採捕許可の対象となっているのは、魚の群れの下に網を設置して漁獲する火光利用敷網漁、同じく群れの下にタモを設置して魚をすくうタモ網漁の2種類。期間は、敷網が昨年10月~今年2月末、タモ網が昨年10月~今年6月末で、本県沖に限って操業が可能となっている。
 特別採捕にあたっては、県が定める「定置網漁場から1海里以上離れる」という規則のほか、組合が独自に「他魚種は捕獲してはいけない」「巻き網船操業時は、1マイル以上離れる」など、他漁業の操業を妨げないようルールを設定して漁に臨んでいる。
 特別採捕によるマイワシが大船渡市魚市場に初水揚げされたのは昨年11月30日。以降も連日水揚げが続いた。
 例年、サンマ漁は12月に終漁し、定置網も2月までにはほとんどが網を上げるため、同魚市場では1月からイサダ漁が始まるまでの2月末から3月初めまでの約2カ月間、水揚げの少ない状態が続く。
 特別採捕による水揚げ開始後の昨年12月から2月末までの同魚市場への総水揚げ数量は、前年同期比50・3%増の1万1426㌧。金額は同17・4%増の10億7220万円と大きく増加した。
 マイワシは近年、全国的に水揚げ量が上向き傾向にある。
 水産庁によると、太平洋系群の漁獲量は、平成23年に10万㌧を上回り、30年には約45万㌧にまで増加した。資源量も22年から増加傾向にあり、30年にはおよそ348万㌧にまで増えた。
 大船渡市魚市場へのマイワシの水揚げも、特別採捕が始まる前の昨年4月から11月末までで数量3812㌧と、前年同期を20・1%上回っている。
 県や組合では今後、この漁業の採算性などを見極めながら、将来的には知事許可漁業として〝新たな漁業〟定着を目指す。