気仙大工の技で歓迎を 「復興の火」展示で上棟式 23日におおふなぽーと 大船渡(別写真あり)

▲ 『復興の火』展示に合わせた上棟式に向けて建設準備を進める気仙大工たち

上棟式会場の図面(鈴木さん提供)

 東京オリンピック・パラリンピックの聖火リレーに先立ち、岩手、宮城、福島の東日本大震災の被災3県で行われる「復興の火」展示。23日(月)には大船渡市大船渡町のおおふなぽーとで展示されることとなっており、当日はこれに合わせ、同町の㈱キャッセン大船渡(田村滿社長)が昔ながらの上棟式を計画。式を通じて復興の火を歓迎し、東日本大震災後の支援への感謝と地域の伝統文化を発信しようとのもので、地元の大工たちが上棟式の開催に向けて腕を振るっている。

 

感謝と伝統文化発信へ

 

 上棟式は棟上げや建前ともいい、建物の建築時に柱や棟、梁(はり)などの骨組みが完成した際に行う儀式。施主が主催し、大工棟梁の取り仕切りによって、これまで無事に建設が進められたことを感謝するとともに、工事の成就と関係者らの安全を願う。
 式の当日には、棟の上に東西南北と中心を表す青、白、赤、黒、黄の5色の旗や、矢を大きく描いた板を交差させ、小さなお宮をまつった「矢車」を設置。気仙では、棟上げを祝うもちまきも親しまれている。
 復興の火の展示に合わせた上棟式は、一般社団法人・気仙大工の復権と未来を考える会(木川田典彌代表理事)の会員・鈴木昭司さん(57)=五葉建築設計事務所代表、日頃市町=が企画。
 東京オリンピック・パラリンピックが「復興五輪」を掲げていること、新国立競技場を設計した隈研吾氏が気仙大工に敬意を示していることなどを踏まえ、「復興五輪への祝意を気仙地方で継承されてきた上棟式で表し、大会が成功裏に進むよう願おう」との思いを込めた。
 これにキャッセン大船渡が賛同し、考える会の技術協力も受けて実現に向けた取り組みがスタート。現在は、猪川町の千葉永治さん(69)=千葉建築=らベテランの気仙大工が作業を進めている。
 会場には、和風切妻屋根、船枻(せがい)造りの上棟式を模した建物(表側のみ)の骨組み(高さ約7㍍、幅約11㍍)を建設する計画。木材は気仙産のスギとアカマツを用いる。
 作業は9日に始まり、現在は千葉さんらが同町内の加工場で、木材加工に必要な印を付ける墨付けなどを行っている。千葉さんは「個人宅の上棟式が少なくなり、特に震災後は見られなくなった。今回を機に、気仙大工の技術や文化があると伝え、残したい」と意欲を見せる。
 考える会の菊池喜清事務局長(85)は、矢車の絵を担当。「矢車には、オリンピックなので気合を入れて『竜虎』の絵を描くことにしている。気仙大工といっても一般の方々からは遠ざかっているところもあり、これを機にその技と、この地域、日本の伝統文化を伝えたい」と意気込む。
 鈴木さんは「震災から9年がたったが、これまで国内外から多くの支援を受けてきた。また、建設に携わる多くの人々の努力でまちができてきた。復興の火の展示に合わせ、建物を建てるときの晴れのセレモニーとして、これまでの感謝と気仙大工の技術、伝統文化を発信し、街並みが再生していく姿を示していけたら」と期待を寄せる。
 キャッセン大船渡の臂徹取締役(40)は「会場を含むキャッセンエリアは、大船渡駅前の交通広場やホテルが開業してから4周年になる。このタイミングに、復興の火とともに新たな一歩を踏み出す機会にしようと主催した。古き良き文化と、後世へ引き継ぐ者の気概を伝えられればと思う」と話している。