観光振興に大きな効果 沿岸と内陸つなぐ大動脈 三沿道と釜石花巻道

▲ 吉浜釜石道路と釜石花巻道路の全線開通で、内陸部と沿岸部が初めて高速交通体系で結ばれた=釜石JCT付近

 国交省南三陸国道事務所は12日、連結から1年が経過した三陸沿岸道路と東北横断自動車道の整備効果や交通状況の変化についてまとめ、公表した。両道路の連結で沿岸と内陸をつなぐ〝大動脈〟が形成され、大船渡市三陸町越喜来の道の駅さんりくや、住田町の滝観洞への来訪者が増加するなど観光振興に大きな効果がみられた。物流機能や水産加工品の生産効率の向上も図られ、復興に向かう沿岸地域の活性化に大きな役割を果たしている。

 

連結から1年が経過

 

 東日本大震災からの復興に向けたリーディングプロジェクトとして、国が「復興道路」に位置づけて整備を進める「三陸沿岸道路」(青森県八戸市―宮城県仙台市、延長359㌔)のうち、岩手・宮城県境をまたぐ唐桑高田道路の陸前高田長部インターチェンジ(IC、気仙町)─唐桑小原木IC(気仙沼市唐桑町)間3・5㌔、吉浜釜石道路の釜石南IC(唐丹町)─釜石ジャンクション(JCT)間9㌔は昨年3月に供用が開始され、それぞれ全線開通を迎えた。
 「復興支援道路」として釜石市と花巻市を結ぶ東北横断自動車道釜石秋田線「釜石花巻道路」(延長約80㌔)も、同月に全通。本県では宮古市から陸前高田市までの三陸沿岸道路が開通しており、沿岸と内陸部だけでなく、県境をまたいで宮古市~気仙沼市間が高規格道路で結ばれた。
 同事務所によると、気仙の三陸沿岸道利用状況(令和元年10月平日平均)は、通岡IC─大船渡碁石海岸IC間が1万3700台で、気仙沼─宮古間で最も交通量が多い。国道45号から三陸沿岸道への交通転換に加え、宮古市から気仙沼市までがつながったことにより大船渡、陸前高田両市への来訪者も増えていることが交通量増加の要因とみられる。
 このほか、吉浜IC─釜石南IC間が6000台、大船渡碁石海岸IC─大船渡IC間が7300台。釜石秋田線の釜石仙人峠IC─滝観洞IC間が8400台となっている。
 三陸沿岸道、釜石花巻道の接続により、沿線の観光地や道の駅では来客が増加。住田町上有住の滝観洞では、最寄りにICが設けられていることもあって、令和元年の入洞者は10月末時点で1万788人となり、平成22年以来、9年ぶりに1万人を突破。釜石JCT周辺区間の開通に加え、道路整備による入り込み増加を見越して洞内のライトアップや案内看板の新設を進めてきたことも増加につながった。
 また、大船渡市三陸町越喜来の三陸IC付近にある道の駅さんりくでは、道路開通や平成30年に完了したトイレ改修の相乗効果により、令和元年の入り込み客数は前年比約3万2000人増の約18万人。道の駅さんりくは三沿道の気仙沼市─釜石市間のIC付近にある唯一の休憩施設となっており、観光バスの立ち寄りも増えたため、1日当たりの売上額は約20万円増加しているという。
 これら観光振興以外でも、原料の輸送時間短縮による水産加工品の生産効率向上、内陸・沿岸の物流円滑化、昨年9月に行われたラグビーワールドカップ釜石開催におけるバスでのスムーズな観客輸送と観戦者の周遊観光の促進など、さまざまな整備効果が表れている。
 同事務所では「多くの人に利用していただき、復興につながっていけば」としている。
 三陸沿岸道路は、令和2年度末までの全線開通を目指して工事が行われている。