矢車に思いを込めて 「復興の火」展示で実施 上棟式に向け絵付け 大船渡(別写真あり)
令和2年3月18日付 7面

東京オリンピック・パラリンピックの聖火リレーに先立ち、23日(月)に大船渡市大船渡町のおおふなぽーとで行われる「復興の火」展示に合わせ、同町の㈱キャッセン大船渡(田村滿社長)が計画する昔ながらの上棟式。地元大工らによる準備が進む中、式の当日に掲げる「矢車」の作画作業が行われており、東京オリンピック・パラリンピックの成功や復興支援への感謝、気仙大工文化の継承などの思いを込めて描かれている。
上棟式は、建物の建築時に柱や棟、梁(はり)などの骨組みが完成した際、無事に作業が進められたことを感謝し、工事の成就と関係者らの安全を願う儀式。今回は、復興の火を歓迎し、東日本大震災後における各地からの支援への感謝と地域の伝統文化を発信しようと、一般社団法人・気仙大工の復権と未来を考える会(木川田典彌代表理事)の会員・鈴木昭司さん(57)=五葉建築設計事務所代表、日頃市町=が企画。同会が技術協力を行っている。
式の会場には、気仙産のスギとアカマツを材料に、和風切妻屋根、船枻(せがい)造りの上棟式を模した建物(表側のみ)の骨組み(高さ約7㍍、幅約11㍍)を建設。棟の上には、東西南北と中心を表す青、白、赤、黒、黄の5色の旗や、矢車を設置する。
矢車は、矢を大きく描いた板を交差させ、交わった箇所に小さなお宮をまつったもの。お宮の中には男神と女神の紙雛、鏡やくしなどを納めるとされる。
矢車に描く矢の絵には、矢じりの先が雄を示す鏑矢(かぶらや)と雌を示す雁股(かりまた)があり、縁起物の鶴亀や竜虎が描かれる。むかしは建設を担う工務店の若い職人らの仕事だったという。
今回は、同会の菊池喜清事務局長(85)が矢車の絵を担当。30代前半のころに初めて矢車の絵を手がけ、「20年ぐらいの間に鶴亀の絵を10棟ぐらいは描いたかな」といい、今回は「オリンピックを盛り上げたい」との思いから初めて竜虎を描くことにした。
1週間ほど前から作業を始め、3尺(約90㌢)四方のベニヤ板に鏑矢と虎、雁股と竜それぞれの絵を鉛筆で下書き。17日はポスターカラーやペンキなどを用いながら、竜の色付けを進めた。
「下書きも色付けも大変。矢じりの部分は左右対称に描かなければならないし、勇ましい竜虎の表情を出すのも難しい」と菊池さん。熱心に手を動かしながら、「昔からあった気仙大工の技術をなんとか継承したい。復興の火とともに矢車の絵にも注目してもらえれば」と話している。