ホテル拠点に地域振興を 共立メンテナンスと覚書 市街地に宿泊施設整備  陸前高田市(別写真あり)

▲ 陸前高田市内に建設されるドーミーインEXPRESSの完成予想図

 陸前高田市と㈱共立メンテナンス(東京都千代田区、上田卓味社長)は17日、高田町の市有地に新しく「ドーミーインEXPRESS(エクスプレス)陸前高田」を整備するにあたり、市と今後さまざまな取り決めをしていくための覚書を締結した。同社は、中心市街地に建設する6階建てホテルの竣工を令和4年1月、オープンを春ごろとし、「周辺地域に流れていた宿泊客を市内にとどめることで、市の活性化に貢献したい」としている。

 地域経済を刺激するうえで、観光客をはじめとする同市への来訪者の滞在時間を延ばそうと、市はこれまで中心市街地へのホテル誘致に取り組んできた。これに、同市役所の包括業務委託を受ける同社が手を挙げ、今年10月の着工が見込まれることになった。
 両社が今後市有地の借地契約をするにあたり、土地の所在地や譲渡を禁止するといった基本的事項を定めた覚書の締結式は市役所で行われ、上田社長と戸羽太市長がそれぞれ覚書にサインした。
 戸羽市長は、まちなかにおける宿泊施設建設が周辺事業者にとっても、観光振興のうえでも切望されていたことに触れたうえで、「市としても、陸前高田に進出してもらったことを後悔させないような体制をつくりたい。さまざまな形で地域利用も図られれば」と期待した。
 また、上田社長は「震災復興を目指す地域に癒やしの場所を提供したい。多くの方に来てもらい、観光の拠点となるような運営を図るとともに、地元のおいしい食材も活用していきたい」と意気込みを見せた。
 共立メンテナンスはビジネスホテル「ドーミーイン」や、リゾートホテル、湯宿などを全国展開。このうち「ドーミーインEXPRESS」は、宿泊だけでなく日帰り入浴やデイユースにも利用できる〝タイムシェア〟型の滞在施設となっている。
 ドーミーインEXPRESS陸前高田が建設されるのは、4月にオープンする市民文化会館南側にあり、復興土地区画整理事業区域内にホテル用地として整備された市有地。建物概要はRC造6階建てで、延べ床面積は約4804平方㍍とする。
 客室はシングルユースとして対応できるダブルルーム98室のほか、ツインタイプ、ファミリータイプ、体が不自由な人にも使いやすいユニバーサルルームなど、合わせて140室弱が設けられる。
 また、全国のドーミーインではそれぞれ、天然温泉や露天風呂を設けるなど入浴施設の充実に力を入れており、陸前高田にも日帰り利用可能な大浴場(約474平方㍍)を開設。かさ上げ地にあり温泉を掘るのが難しいため、広田町の黒崎温泉から毎日湯を運ぶ計画としている。
 食堂では、周辺にある飲食店の利用を促すため、提供するのは朝食に限り、ホタテやカキ、ワカメをはじめとした地元食材を活用する。また、ホテルオリジナルの周辺案内マップには飲食店や観光情報、道の駅「高田松原」など近隣施設なども盛り込むという。
 同社は、ホテルと隣り合う市民文化会館の指定管理も担うことから、同社の自主事業によるコンサート、文化的活動をするサークルや部活動などの合宿誘致、同館の会議室を利用する企業関係者の研修などとのセット利用、パック商品などを提案し、利用者に割安感のあるサービスを提供していくとする。
 さらに、デイユースでは、早朝に同市へ到着した人が昼までの仮眠に利用したり、昼間に海で遊んだ海水浴客が、大浴場を利用して帰るといった柔軟な使い方もできる。
 従業員は、社員と外注スタッフらの地元雇用を想定。
 上田社長は「地元の方に5~6年で支配人となっていただけるよう、人材育成にも力を入れたい」と述べ、ホテルを拠点とした地域経済の活性化に寄与していく考えを示した。