5人が任期終え〝卒業〟、地域おこし協力隊4人が市内に定着へ 陸前高田

▲ 山﨑さん、北村さん、古谷さん、平山直さん、朋花さんの5人が地域おこし協力隊を卒業

 平成28年度から募集を開始した陸前高田市の地域おこし協力隊はこの春、一気に5人が任期を終え、〝卒業〟する。県外出身者らが地域に根づいて活動し、産業の課題も見つめながら地域の可能性を探る中、それぞれの道を模索してきた。このうち4人が今後も同市にとどまり、事業者として自立したり、これまでの業務を発展的に継続するなど、陸前高田にさらに深く根を張ろうとしている。

 地域おこし協力隊は、地域振興に寄与する人材を自治体などが募るもの。三大都市圏をはじめとするまち等から地方へと生活拠点を移した人が、その地域でなりわいをつくり、自活を目指して活動する。陸前高田市ではこれまで25人を委嘱し、本年度末時点では第1次産業振興と観光交流、移住・定住促進などの分野で18人が活動する。
 市からの委嘱期間は最大3年。29年度に着任した北村裕人さん(33)=ピーカンナッツ推進分野、古谷恵一さん(31)=交流人口拡大分野、平山直さん(30)、朋花さん(30)夫妻=林業担い手分野=の4人が3月ないし4月末日で任期満了となる。
 また、NPO法人高田暮舎に所属し、移住・定住促進サイト「高田暮らし」のライターなどを務めていた山﨑風雅さん(24)=移住・定住促進分野=は、本来の任期を1年残しているが、今回〝円満〟に2年間の業務を完了する。
 5人はこれまで培ったノウハウや関係性をもとに、それぞれの道へ。業務の傍ら、週末はワカメ養殖の手伝いなどをしていた横浜市出身の山﨑さんは、定置網漁の世界へ飛び込むため、気仙沼市へ転居する。
 山﨑さんは、陸前高田市を拠点とするNPO法人SETのメンバーとして大学時代から同市に通う中、生産者の暮らしに興味を持つようになり、大学卒業後に三陸地方への移住を決意。2年間の協力隊としての活動を通じ、その思いをより強めていた。拠点は気仙沼に移るが、今後も「高田暮らし」のライターとして陸前高田にもかかわり続けるという。
 一方、北村さんと古谷さん、平山夫妻は同市にとどまることを決めた。
 北村さんは大阪府交野市出身。29年の委嘱当初は農林課に在籍し、自伐型林業推進隊として活動していたが、同市が産業化を進める「ピーカンナッツ」事業に少しずつ軸足を移していった。今後は同市のゴールデンピーカン社に就職し、その市場拡大や知名度の向上に努める。
 (一社)マルゴト陸前高田に所属する古谷さんは横浜市出身。慶応大時代からアカペラサークルのメンバーとして通ってきた〝思い出の地〟で役に立ちたいと移住した。〝外部の目線〟から同市の美点に目を向け、修学旅行や企業研修などの「民泊」受け入れ態勢づくりに力を尽くしてきた。
 3年間はあっという間だったという古谷さんは、「地域の方がここの文化や伝統に誇りを持って暮らしていることに、改めて魅力を感じた。受け入れ家庭や地域のお店ともつながりができたので、引き続きマルゴトで働き、横のつながりも生み出したい」とする。
 高校時代から林業に興味があったという直さんは千葉県鴨川市、朋花さんは北海道日高町の生まれで、陸前高田とは着任するまで縁がなかった。しかし「震災の時は何もできなかった。よそから来た人間が、この地域で林業をして、暮らしていけるというところを示すことには意味があると思う」と直さん。自伐型林業に取り組んだ3年間の経験をもとに、個人事業主として開業する。
 また、木を切りながら、道の駅・高田松原にある「気仙杉」のテーブルを作るといった木工制作にも携わってきた朋花さんは今後、月の半分は小友町にある杉の家はこねのスタッフとして働きながら、自身の作品作りや木工ワークショップの開催などに挑戦していくという。
 それぞれ、地元の消防団に加入したり、伝統の祭りに参加するなど、地域に溶け込みながら生活。これまでを振り返ってみると、「仕事のことより、地域活動や地元の人との交流のことのほうが浮かんでくる」と口をそろえる。朋花さんは「名前は〝協力隊〟だけれど、してもらうことのほうが多かった。ここでまた年数を重ねていく中で、新しく来てくれた人にしてもらったことをお返ししていきたい」と語る。
 地域おこし協力隊の所管である市の地域振興部観光交流課は、「皆さんが本当に自立し定着できるよう、連携してサポートし相談にも乗りたい」としている。