製鉄の歴史音色で継承 風鈴作りが終盤に 住田たたら研究会 住田(別写真あり)

▲ 地元の餅鉄を原料とし、アツモリソウをイメージした風鈴

 住田たたら研究会(高木辰夫会長)による、昔ながらのたたら製鉄で取り出した「鉧(けら)」を生かした風鈴作りが終盤を迎えている。町内で採れた餅鉄(もちてつ)を原料とし、町花であるアツモリソウをイメージした木製の型づくりや塗装作業は、地域住民が担ってきた。関係者は、地域資源とマンパワーが結集して生まれたさわやかな音色に、伝統継承への願いを込めている。

 

アツモリソウの形に加工

 

 住田にはかつて、現在の国道397号栗木トンネル近くに栗木鉄山が位置し、明治14年から大正9年まで稼働。それ以前の藩政期にも、地元産の砂鉄を生かした製鉄が気仙ではいち早く行われ、地域の住民生活や農作業などを支えてきた。
 たたら製鉄は、木炭の燃焼熱で砂鉄などから還元する昔ながらの製造法。同研究会は、10年以上前から活動している。町内で餅鉄を確保し、有住小の製鉄体験にも協力するなど、伝統文化を伝え残す取り組みを地道に展開してきた。
 研究会では5年ほど前から「何か形に残したい」と模索。町花であり、地域住民には「かっこ花」として親しまれているアツモリソウに注目し、花の形に似た風鈴をつくろうと動いてきた。
 製造には、高温で溶かした鉧を流し込む砂に形を映す型が必要となる。岩手大学の協力を得たほか、町内の仏像彫刻師に木製の型製作を依頼し、数年間にわたり試行錯誤を重ねてきた。
 ようやく取り出しやすい型が完成し、先月27日と今月10日に盛岡市の岩手大学鋳造技術研究センターで鋳造作業が行われた。関係者の思いが実り、木型通りに葉の形などがしっかりと描かれた高さ4㌢ほどの釣鐘20個余りが完成した。
 塗装は、町内の自動車整備工場に勤務する世田米の岩城和彦さん(60)に依頼。自動車の塗装技術を生かし、さび止めや白色の下地を施した後、葉や花びら部分の着色を仕上げる。28日は紫がかった赤色の塗料を吹き付ける作業などを行った。
 失敗が許されない一発勝負とあって、岩城さんは慎重な手つきで釣鐘に向き合い、立体感を細やかに表現。「塗装をなるべく薄くして、音に影響を与えないように注意している。あとは〝かっこ花〟らしくどう仕上げるか」と話していた。
 順調に進めば、4月上旬の完成が見込まれる。研究会では今後、役場内での展示など、多くの人がさわやかな音色を堪能できるよう検討することにしている。