津波防御ライン確保 「気仙川水門」ほぼ完成 陸前高田

▲ 県内最大級となる気仙川水門。一部設備を除いて完成し、高田海岸の津波防御ラインが確保された

 陸前高田市の気仙川河口部で、津波対策として県が整備を進めていた「気仙川水門」が、一部設備を除いて3月末に完成した。これにより、高田海岸の防潮堤と同水門が接続となり、周辺の津波防御ラインが確保されたこととなる。水門には自動閉鎖システムが導入される予定で、県では年内の完成を目指して工事を進めていく。


県内最大級の自動閉鎖システム、今後導入

 

 気仙川の流域は住田町、陸前高田市にまたがり、延長約40㌔、流域面積は約520平方㌔㍍。同川水系の本格的な治水事業は昭和35年のチリ地震を契機に始まり、平成9年に河口から約2・8㌔区間に堤防が整備された。
 平成23年の東日本大震災では、津波が河口から7㌔以上遡上(そじょう)し、護岸(TP+5・5㍍)を大きく越えた。堤防は4カ所(725㍍)が破損したほか、護岸、導流堤など1600㍍以上が損傷し、国道45号やJR大船渡線などの合わせて4橋りょうが流失した。
 災害復旧にあたっては、「堤防かさ上げ」と「水門」を工法比較した結果、かさ上げの場合は区間が6・5㌔におよび、景観や生活環境に与える影響が大きいうえ、工事が長期間にわたりコストもかかるため、総合的に判断した結果、水門方式を採用した。
 今回整備した気仙川水門は、数十年から百数十年に一度発生する津波を想定して堤防高をTP+12・5㍍とし、震災前の護岸の堤防より7㍍高くなっている。延長は211㍍で、県内でも最大級の水門となる。
 事業費は199億8900万円で、平成25年3月に着工。水中での基礎工事となったため、施工しながら地盤調査を行う必要があり、工法の変更もあったことから当初予定より3年ほど遅れて水門本体の完成に至った。
 本体の完成により、現在、被覆ブロックの設置が行われている高田海岸の防潮堤第2線堤(TP+12・5㍍)と接続されたことで、大規模な津波防御ラインが形成された。
 気仙川水門には今後、「水門・陸こう自動閉鎖システム」が導入される。同システムは、国が発令する津波注意報・警報を県が全国瞬時警報システム(Jアラート)で受信すると、衛星回線を通じて施設に閉鎖命令が出され、自動で水門・陸こうが閉鎖されるというもの。
 沿岸部の水門・陸こう約520基のうち、約300基は常時閉鎖やフラップゲート式となり、残る約220基が自動閉鎖の対象となっている。
 震災により、本県では水門・陸こうの閉鎖作業に当たった消防団員48人が犠牲になった。県ではこのことを教訓として自動閉鎖システムを導入し、安全かつ迅速・確実な閉鎖につなげる考え。
 県大船渡土木センター河川港湾課の大澤匡弘課長は「早期の完成に向けて努力していく」と話している。