新型コロナウイルス/「けんか七夕」今年中止に 感染予防で苦渋の決断 震災後も続けた今泉伝統行事

▲ 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、中止が決まった「けんか七夕」(写真は昨年)

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、陸前高田市気仙町今泉地区の夏の伝統行事「けんか七夕」の運営組織が、今年8月7日の七夕の中止を決めた。戦後、中止となったのは今回が初めてという。津波で壊滅的な被害を受けた東日本大震災後は、場所や規模をかえながらも中断せずに実施してきた。準備作業で集まるのを回避するとともに、当日も大勢の観光客が密集するため、感染症予防を最優先する異例の対応に踏み切った。

 

戦後初の異例対応

 

 「気仙町けんか七夕祭り保存連合会」(佐々木冨寿夫会長)が7日夜、臨時の総会を開き、役員や若手約30人が今後の方針を協議。猛威を振るう新型ウイルスの収束が見通せないことから、全会一致で今年の中止を決めた。
 約900年の歴史を持つと伝わるけんか七夕。長さ15㍍の丸太の「かじ棒」をくくり付けた総重量4㌧超の山車2基が豪快にぶつかり合うのが最大の呼び物で、今泉地区住民が誇る「おらほの祭り」として続いてきた。
 震災の津波で、四つの祭組がそれぞれ所有していた山車は、1基を残して流失。住民自身も自宅を流され、市内外に散り散りとなった。それでも「伝統を絶やすまい」と中断はせず、震災が起きた平成23年は1基のみを運行、翌24年には2基による「けんか」を繰り広げた。
 それ以降、祭りを支える担い手不足や集まる場所の確保に毎年苦慮。復旧工事に伴い、祭り会場も転々としながらも、8月7日には、にぎやかな祭りばやしを響かせてきた。一昨年は、高さ12㍍ほどにかさ上げされた本来の祭り会場での初開催に至り、昨年は山車に震災前の地区名を冠する伝統を復活させた。
 今年は、かさ上げ地の七夕専用の直線路を舞台に開催する予定だった。1月には、山車2基のかじ棒を新調するため丸太を切り出し、5月以降、山車の組み立てや山車を色鮮やかに飾る「アザフ」制作などの本格的な準備が控えていた。
 佐々木会長(66)は「昨年の祭りも若手が準備段階から一生懸命頑張ってくれていた。雨が降ってもやりが降っても欠かさず8月7日にやってきたので、悔しいし苦渋の決断」と無念さをにじませる。
 一方で、「コロナの状況を考えれば仕方がなく、総会でも全員中止を前向きに受け止めていた。単に中止するのではなく、来年へとつなぐため、今年も内輪では何かしらやりたいと考えている」と構想を語った。