今秋に仮橋工事着手へ 架け替え控える昭和橋 住田町

▲ 早ければ年内で見納めとなる現在の昭和橋

 県の治水対策の一環として、架け替えが行われる住田町の昭和橋の工事スケジュールが決まった。3月25日に歩行者専用の仮橋の工事が契約となり、今後、気仙川のアユ漁解禁期間終了後の秋以降に仮橋設置工事に着手する。仮橋設置後は、現橋を解体してから新橋の工事を開始することとしており、県では令和5年度内の完成を目指して整備を進めていく。

架け替え後のイメージ図

令和5年度内の完成目指す


 気仙川に架かる町管理の昭和橋は、世田米商店街と役場などがある川向地区を結び、昭和8年に架橋。長さ73㍍のこの橋は気仙川沿いに立ち並ぶ蔵並みと調和し、歴史や古き良きたたずまいを感じさせる景観を形成している。
 一方、通行可能な道幅は3・2㍍で一般車両同士のすれ違いができない狭さとなっている。また、橋脚が7本あり、その間は9・1㍍しかない。現在の基準は26・2㍍で、現状では上流からの木などが引っかかり、川の水をせき止めることで浸水被害を及ぼす恐れもあると指摘されている。
 県では詳細設計をまとめる中で、一昨年9月から昨年10月までの間に、専門家や地域代表らによる昭和橋景観検討委員会を計5回開催。デザインコンセプトには「世田米の中心にて住田町の歴史と文化を象徵し、地域とともに新たな歴史をはぐくむ橋」を掲げ、単に機能だけでなく住民生活や景観との調和も重視してきた。
 新橋は、鋼桁とコンクリートを合成したものを用いて建設。橋長は72㍍、幅員は7・8㍍で、橋脚は1本とし、構造上で必要な幅は確保しつつも、むやみに大きくすることは避け、橋上部に合わせた形状で整備する。
 架橋位置は現行ルートと同じ場所としていることから、年内にまず現橋の下流側約200㍍地点に、延長66㍍、幅2・6㍍の歩行者専用の仮橋を設置する。
 仮橋の設置にはアユ漁解禁期間後に着手。年内をめどに仮橋を完成させ、現橋の解体に移る。
 来年の気仙川への稚魚放流時期までには現橋の解体を済ませ、その後も稚魚放流時期やアユ漁解禁期間を避けながら新橋の工事を進めていく。
 橋だけでなく、現在はコンクリートで覆われた護岸も改修。生物が暮らしやすい環境などに配慮し、石積みの構造とする。
 欄干部の手すり部分にあたる「笠木」には、石材を採用。手になじみやすい加工も施す。現在の昭和橋と同様に、橋端部に設置する「親柱」は重厚感がある石材を使い、天端部に照明をつける。
 現橋の高欄には、太平洋戦争の空襲で弾片が貫通したとされる穴があり、戦争遺産として昭和の記憶を受け継ぐ役割も担ってきた。この穴がある欄干部は、再利用が検討されている。
 県では令和5年度内での新橋完成を目指しており、県大船渡土木センター住田整備事務所の佐藤高久所長は「ようやく本格着工となる。令和5年度に向け、早期完成を目指して頑張っていきたい」と話している。