新型コロナウイルス/終着点見えず戸惑いも 学校や小売り、観光など緊急事態宣言への対応手探り 気仙
令和2年4月19日付 1面

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、緊急事態宣言の対象範囲が16日、全国に拡大された。これを受け、全国で唯一感染者が確認されていない本県では、接客を伴う飲食店への休業要請、都道府県をまたいだ移動の防止といった政府の基本的対処方針に準じた対策についての検討が進む。気仙2市1町では宣言の翌17日までに、小中学校と一部高校の休校が決定。小売りや飲食、観光など多業種が宣言への対応に追われる。宣言の対象期間は5月6日(水)までだが、感染症収束の見通しが立たない中で不安が広がっている。
学校
県は現段階で、緊急事態宣言に伴う休校は要請しない方針を示しているが、気仙2市1町では全小中学校の休校をすでに決定。
このうち、陸前高田市は市内の医療機関で診察した県外医師の新型コロナウイルス感染判明を受けて17日から、全小中学校を24日(金)まで臨時休校とし、その後についても検討中。県教委も県立高田高校を同じ期間、休校とした。7地区にある放課後児童クラブは閉鎖。部活動やスポーツ少年団活動も中止している。
大船渡市と住田町は22日(水)から5月6日まで、それぞれすべての小中学校を休校とし、部活動とスポ少活動も中止。市内の各放課後児童クラブは、21日(火)までに方針を決める見通し。住田町は、必要最小限の受け入れにとどめるよう運営者に要請するとしている。
大船渡市赤崎町の放課後児童クラブ「にこにこ浜っ子クラブ」は18日、児童11人が利用。小松琉希亜君(赤崎小4年)は「学校が休みになって友達と一緒に遊べなくなることがいやだ。先生と会えなくなるのも寂しい」と、休校前の貴重な時間を過ごした。
同クラブでは、平日の放課後は約50人の児童が利用。久保田涼子主任は「休校後も同数の児童が利用すれば、密接する空間がどうしてもできてしまう。ほかのクラブと足並みをそろえたいとは思っているが、難しい部分もある」と悩む。20日(月)に今後の対応にかかる役員会を開き、保護者などとも協議する予定という。
同市に住む母親の一人は「休校になったほうが親としては安心。学童クラブを利用しなければならない家庭もあると思うので、開所が必要になるのでは」と語る。
小売り
宣言対象地域拡大後、初の土曜日となった18日、スーパーマーケットやドラッグストアなどの小売店は通常通り営業。大船渡市内のスーパーを訪れた女性は、「子どもと一緒に来たが、車内で待機させて人混みに近づけないようにしている」と、買い物も急ぎ足だった。
気仙などにスーパーを展開する㈱マイヤ(井原良幸代表取締役社長)では、各店のレジで▽担当者の手袋着用▽コイントレーでの現金、カード、商品券の受け渡し▽透明アクリル板の設置▽客同士の距離確保──などを実施していく。混雑を避けるため、21日からはチラシの配布・配信を中止。特売品などは店内での周知にとどめる。
社内では検温をはじめとする健康チェックなどを徹底し、人数が集まる会議は自粛。同社営業企画部の長谷川秀美統括マネジャーは「不安を抱えている従業員もいると思うが、〝レジに出たくない〟という声は聞こえてこない。いつも以上に頑張ってもらっており、感謝している」と話す。
そのうえで「動向を見ながら営業時間短縮なども検討していく見込み。お客さまには手指消毒やソーシャルディスタンス(社会的距離)確保などについて、これまで以上に呼びかけていく」とする。
飲食
達増拓也知事は17日に発した県民向けメッセージ中、「現に全国各地でクラスター(感染者の集団)が多数発生している『繁華街の接待を伴う飲食店等』については、利用を強く自粛していただきたい」と呼びかけた。
大船渡市大船渡町内で飲食店を経営する70代女性は、「これまでは常連さんのために開けていた感じ。休んだ分の補償がしっかり出るのなら休業を考えるが、まだよく分からない」と困惑する。
50店ほどが加盟する県飲食業生活衛生同業組合大船渡支部の千葉武継支部長は、「影響は2月から見え始め、運転資金が尽きかけている事業者が多い。もうすでに、飲食店は店を開けても人が来てくれず、自己努力ではなんともならない」と危機感をあらわにし、「休業要請だけでなく、同時に具体的な救済策を打ち出してもらえば」と求める。
また、「震災前から借金して営業し、津波で流され、また借金して再建したという店も少なくない。震災時以上に即効性ある支援策が必要。われわれも支援策を勉強しながら、組織として動きたい」と語る。
観光・宿泊
大型連休期間を含めた移動の自粛は、観光や宿泊関連業にも大きく影響する。大船渡市の㈱海楽荘(志田豊繁代表取締役)が運営する大船渡町の「大船渡温泉」では、緊急事態宣言対象期間中の休業へ調整を進めている。
新規予約は受け付けをやめ、予約済みの客には連絡して休業への理解を求めている。すでに長期滞在している宿泊客には予定通り対応する。
志田繕隆支配人は「感染リスクを考えると、営業していていいのかという気持ちはあったので、今回の宣言は休業を決断するきっかけになった。営業的には厳しいが、今は人の動きを制限すべき状況なので、一日も早い収束を願いたい」と話している。
選挙
19日には大船渡市議会議員選挙が告示を迎える。立候補を予定している陣営では感染予防対策に余念がない。現職の一人は「宣言前から、後援会活動の地域回りで対面した方に『議員だけが感染しないわけではないだろう』と言われたりもした」と明かした。選挙戦突入が確実視されるが、期間中は対面ではなく選挙カーからの呼びかけを中心とする考えという。
各選挙事務所では、手指消毒用のアルコールを常備。定期的な換気に加え、19日の第一声時には、室内に支援者が集中しないよう参集の呼びかけを抑える動きも。公共施設などでの個人演説会は、多くの陣営が見合わせる方針を示す。
事務所よりも狭い空間となるのが、早朝から夜まで各地に繰り出す選挙カー。今回は「ウグイス」を頼まず、運転手と候補者だけの乗車を検討する陣営もみられ、異例の選挙戦となりそうだ。