課題と今後は─新型コロナウイルス/各界トップに聞く② 大船渡市・戸田公明市長

「最大限知恵を絞りスピード感を」

 

 ──現段階で市が重要視している対策は。
 戸田 まずは、今後も感染者を出さず、感染を拡大させないこと。不要不急の外出を避け、「3密」を徹底的に回避するなど、基本的な感染予防の徹底。さらに正しい知識を呼びかけ、人権や風評被害にも配慮して対策をとりながら、個人や小規模事業者、生活困窮者への支援を考え、市役所内の組織体制を強化し、感染者が出たことも想定した業務継続計画をつくった。これらはすべて重要ととらえている。
 ──復興事業の顔ともいえる大船渡地区には商業施設が集積し、飲食店が多く、苦境にあえいでいる。今後の対策は。
 戸田 1日の市議会臨時会に補正予算を上程したが、第1弾は市内の運送業や宿泊業、飲食店などを対象とした(一律30万円給付の)「中小企業事業継続支援金」と、宅配やテークアウトなどに新たに取り組む事業者を支援する(上限20万円の)「飲食業等事業継続活動支援補助金」を打ち出した。さらに、生活困窮者向けの臨時給付金支援事業と、ひとり親向けの臨時給付も行う。今は第2弾に向け、庁内で急いで検討している。
 ──復興事業への影響はどうか。
 戸田 年間予算約20億円の復興事業は、主として建設関連事業であり予定通りいけるのではないかと思っている。ただ、ソフト的な被災者支援、例えば災害公営住宅でのコミュニティー形成支援や健康チェック、生活相談などは顔を合わせた対応が難しいなど、影響があると思っている。
 ──さまざまな活動がストップしている中で「大船渡ならでは」の問題があるとすれば何か。
 戸田 全国共通の問題であり、感染が拡大している地に比べればダメージは小さいのかもしれないが、例えば緊急事態宣言期間が延長された時にどうなるか。
 当然、自粛期間は長くなる。今は、三陸・大船渡夏まつりなど毎年8月に開催されている行事の中止が決まったところ。9月に予定している「東京タワーさんままつり」などは、日本全体に自粛解除宣言のようなものが出るかが条件になっていくだろう。農林水産分野の影響や支援策も、調査の指示を出している。
 ──施策展開や情報発信など、迅速な対応に向けた動きはどうか。
 戸田 1日付で専任職員を置いた感染症対策室を新設するなど組織を強化し、施策の多様化とスピードアップを実現させる。副市長をトップとする対策本部幹事会では、新たな施策立案と庁内体制強化を図る。 
 職員の皆さんには、よりスピード感を求めたい。最大限知恵を絞り、スピード感を出していく。まだ、どこかに〝平時〟の感覚が残ってはいないか。具体的な動きの中で私も指示を出しながら、結果として示すことができるようにしたい。
 ──国や県に対する要望で、特に重視している内容は。
 戸田 治療薬やワクチンの早急な開発がなければ、東京五輪の開催も危ういだろうと思っている。開発後の供給体制構築も重要だ。岩手県としては特に、病床や医療機器、医療物資など感染患者が出た時に医療崩壊を防ぐ体制構築が急がれるのではないか。
 また、国民向けのマスクや消毒液も行き届くようにしっかりと市場管理ができるようお願いしたい。経済活動や日常生活を段階的に通常時に戻していく方針作成や、通常に戻るまでに必要な支援策を随時行っていくことも重要ととらえている。
 ──大型連休を迎えた住民にメッセージを。
 戸田 みなさん非常に協力的で、よく我慢をしていただいている。みんなで危機を乗り越えようという気持ちが強く、それが感染者ゼロのキープにつながっている。
 新型コロナウイルスは人ごとではなく、自分事。引き続き「3密」を避け、なるべく自宅で過ごしてもらいたい。仮に外出する場合も、他人との距離を意識するなど我慢を続けてもらいたい。
 つらい思いをしている方は多いはず。行政も動き、手をさしのべながら、一緒に乗り越える。ともに頑張りましょう。(聞き手・佐藤 壮)