課題と今後は─新型コロナウイルス/各界トップに聞く③ 陸前高田市・戸羽太市長

「オール陸前高田で乗り切ろう」

 

 ──新型コロナウイルスに対する市の対応は。
 戸羽 全国的に猛威を振るう中で、岩手県から感染者を出したくないという強い思いで、さまざまな取り組みをしてきた。
 医療や介護、教育現場に対してマスクや消毒液を配布するとともに、観光施設や公共施設の一部閉館措置を実施してきた。市役所内では、大型連休中も市民の電話での問い合わせに対応できるようにする。職員の感染予防と同時に、行政サービスを停止させないため、課内で調整したうえ平日を休みにして土日に出勤するという分散勤務の対応も取っている。
 今後も誰一人取り残すことのないよう、適時適切な対応を実施し、安全・安心につなげていく。
 ──国などからの経済的支援が待たれる中、特に苦労している事業者への独自支援にいち早く乗り出した。
 戸羽 本来であれば、東日本大震災発生日の3月11日から5月の大型連休までの期間は、観光客を含めて来訪者が非常に多い時期。しかし、新型コロナウイルスの問題で道の駅「高田松原」をはじめ、交流人口の拡大が図られる施設を臨時休館するという状況となっている。
 大型連休の集客が見込めず、あしたの生活そのものに不安を持っている事業者がいる。だからこそなんとか連休の前に、特に経済的なダメージを受けた業種に対して支援できるようなスピード感のある対策を検討してきた。
 支援のニーズを随時調査しており、今後、国や県の経済対策なども精査しながら、第2、第3の対策の必要性を検討していく。学費の負担が大きい学生の子を持つひとり親家庭、独居者らを含め、市民の生命と生活を守るため、緊張感を持って対応していきたい。
 ──国や県に対する要望は。
 戸羽 PCR検査体制の拡充が求められる。感染症の疑いがある人や具体に症状が出ている人たちが安心できる体制づくりとその対応をお願いしたい。
 経済面でいえば、やはり支援のスピード感が大事。今まさに困っている人からすれば、支援までの間が大変だ。
 また岩手県の支援策として小売り、飲食などの中小事業者に対する家賃補助も発表されたが、市内の場合、支援の対象が限られる。沿岸部の実態も踏まえた支援策をぜひお願いしたい。
 ──市民らにお願いしたいことは。
 戸羽 まずは、職場や学校、家庭など、あらゆる場面で「三つの密(密閉、密集、密接)」を避けること。都道府県をまたぐ移動を自粛し、やむを得ず帰省する場合は、帰省後2週間は外出を避け、健康観察のうえ、感染拡大防止に努めてほしい。
 一方で日常生活で必要な買い物などについては規制外。買い物は可能な限り市内で、市内で入手できないものがあれば次は気仙管内で行うなど、移動する距離、時間を短くしつつ、地域経済を守るようご協力いただきたい。
 ──デマのような不正確な情報で不安を募らせる市民もいる。
 戸羽 事実とは全く違ううわさや作り話が飛び交っている。市としても懸命に「SNSなどで流れるような話をうのみにしないでください」と伝えているが、止めるのはなかなか難しい。
 懸念されるのは、不正確な情報をもとにした誹謗(ひぼう)中傷であり、市民にはこれを厳に慎んでほしい。だからこそ、われわれ行政は、正確な情報をできる限り速やかに伝える姿勢を貫いてきた。不正確な情報に惑わされず、冷静に対応するよう心がけてほしい。
 ──市民にメッセージを。
 戸羽 震災から9年が経過し、これまで市民一丸となって復旧・復興事業を進め、みんなで苦労してきた。「いよいよこれから」という今ここで、感染症の拡大でくじけてしまうことだけは絶対に避けなければならない。
 これからもしっかりと負けない対策を、「オール陸前高田」で頑張っていかなければいけないと思っている。
(聞き手・高橋 信)