アワビ種苗出荷始まる 本年度も400万個供給へ 大船渡の県栽培漁業協会(別写真あり)

▲ 水槽からアワビ種苗を取り出す職員ら

 大船渡市末崎町の一般社団法人・県栽培漁業協会(大井誠治会長)は15日、飼育しているアワビ種苗の出荷を開始した。初日はいずれも山田町の船越湾漁協に8万個、三陸やまだ漁協に4万6000個を出荷。県内漁協を対象に、本年度も9月までに約400万個の供給を見込む。
 この日は、午前8時30分ごろから作業。順調に成育した稚貝は水槽から取り出されると陽光を浴びて輝きを放ち、箱詰めされた後、トラックに積み込まれた。
 生産面における新型コロナウイルスの影響に目立ったものはないというが、従事者約20人はマスクの着用に加え「3密」の回避も意識。手指消毒の徹底も図った。
 伊藤克宏専務理事は「やっと今年も出すことができるようになった。400万個の出荷に向けた最初の日であり、しっかりと育ってほしいという思い。放流した分は水揚げの25〜30%と言われており、水揚げが増えていくことを期待している」と話していた。
 同協会は平成6年、安定した栽培漁業を推進する母体組織として設立。県などが開所した研究室を活用し、アワビ、アユ、ヒラメなどの種苗生産業務などを展開している。  
 東日本大震災で事務所や各施設が壊滅的被害を受け、全事業を休止。施設の復旧工事は24年9月に始まり、25年9月末に完工した。
 アワビ稚貝を育てる循流式水槽を震災前の30基から40基に増設し、育成能力が向上。ここ数年の年間出荷量は、約400万個で推移している。
 本年度供給する種苗は殻長平均25㍉のもので、平成30年秋に県内の漁場から親貝を採取し、令和元年春に採卵したもの。アワビの生産サイクルは、4、5月に採卵と幼生管理・採苗、6月〜翌年3月ごろまでが屋外水槽飼育。毎年、海水温が10度を超えると放流時期とされ、殻長が9㌢以上になる収穫時期までは4年程度要する。
 種苗を供給するのは大船渡市漁協、綾里漁協、越喜来漁協、吉浜漁協を含む県下20の漁協で、広田湾をはじめ独自に種苗を生産放流している漁協は除く。殻長1㍉当たり2・1円で供給し、9月末まで受け入れ漁協の要望に順次対応する。