漁業者確保へ独自制度改正 「がんばる海の担い手支援事業」補助内容を大幅見直し

広田湾漁協と共同で支援

 

 陸前高田市は、漁業の将来を担う新規就業者の確保・定着を加速させようと、市独自の「がんばる海の担い手支援事業」の補助内容を大幅に見直し、活用を促している。年間の補助額は、従前の最大120万円から約300万円に増額。資機材整備費、資格取得費など支援区分を明確化し、広田湾漁協との共同できめ細かく支援する。新規就業者を指導する漁業者にも最大で年間36万円を給付する支援を新たに加え、受け入れ体制の拡充も目指す。

 

年間120万円→300万円に増額

受け入れ態勢拡充も目指す

 がんばる海の担い手支援事業は、県内に先駆けて平成22年度に創設。県や沿岸市町村が中心になって就業希望者を育成する「いわて水産アカデミー」が昨年度から始まり、こうした動きをとらえ、就業後の定着につなげようと、初めて制度を見直すこととした。広田湾漁協などとの検討の末、今月1日に改正した。
 対象は60歳未満の市民で、専業(年間150日以上)で漁業を続けられる人。事業計画(漁業の種類、出漁日数、所得・水揚げ量の目標)の策定が必要となる。国や県などから漁業者育成に関する補助金交付を受けていたり、市税を滞納している人は受給できない。
 これまでは、新規就業者に年間最大120万円、漁家の後継ぎに同20万円を奨励金として交付する仕組み。用途を限定せず、資機材の購入や軌道に乗るまでの生活資金に充てるなど幅広い目的で活用できるのが特徴だった。
 今回から補助内容を充実させ、▽資格取得支援▽資機材整備支援▽生活支援▽指導漁業者支援──四つの支援区分を新設し、区分を重複して受給できる。「指導漁業者支援」を除く3区分は、それぞれ「新規就業型」と「後継ぎ就業型」の二つに分けた。以前は市が全額を負担していたが、市が7割、広田湾漁協が3割を支払う。
 「資機材整備支援」新規就業型の受給期間は最長3年。補助率を2分の1とし、金額の上限は1年目120万円、2年目72万円、3年目48万円。同支援の後継ぎ就業型は補助率は同じで、交付は1回限り。金額の上限は60万円に設定している。
 「指導漁業者支援」は新規就業者を受け入れる人材の掘り起こしを目的に創設した。対象は広田湾漁協組合員とし、条件は1カ月につき15日以上技術指導できる人。1カ月当たり3万円を最長2年間支給する。
 市によると、市内漁業者数は平成30年度時点で601人で、うち60歳以上は398人と全体の65%を超える。高齢化に加え、東日本大震災発生により、漁業者数は震災前の平成20年度よりも306人減と減少を続ける。
 がんばる海の担い手支援事業の補助実績は、初年度の22年度が4人。それ以降交付したのは25年度3人、26年度2人、30年度3人で、昨年度はゼロ。指導役の漁業者確保も容易でなく、新たな担い手と受け入れ側のマッチングも大きな課題となっている。
 市水産課の菅野泰浩課長は「水産業は当市の基幹産業で、地域活性化には浜のにぎわいが不可欠。一人でも多くの人に制度を利用し、定着してもらいたい。さらに受け入れ家庭の拡充のためぜひ経験豊富な組合員のご協力をお願いしたい」と呼びかける。
 主な支援内容は別表の通り。問い合わせ、申し込みは同課(℡54・2111内線342)、または広田湾漁協(℡56・3111)へ。